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公開日:2025/05/20
最終更新日:2025/06/07

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資産税に強い税理士は、今、最も求められている存在の一つです。
相続・贈与・譲渡といった一度きりの意思決定が多く、税理士の関与が税額だけでなく家族関係にも大きく影響します。
その分、一般税務に比べて報酬単価が高く、指名・紹介での案件も増えやすい分野です。
しかし専門性が高く、明確なキャリア設計がないと「何から始めればよいか分からない」人も多いでしょう。
本記事では、資産税専門税理士としてのキャリアパスを、実務フェーズ別に整理します。
必要な資格やスキルはもちろん、どのように実績を積み、発信力を磨くかまで具体的に解説します。
「資産税を武器にしたい」「差別化できる専門領域を作りたい」という方にとって、必見の内容です。
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資産税業務とは?
資産税業務とは、個人や法人が保有する資産に関連する税務を取り扱う分野であり、特に相続税・贈与税・譲渡所得税に関する業務が中心です。税理士業務の中でも、高度な知識と専門性が求められ、富裕層や地主・中小企業オーナー層との関わりが多くなります。
主な資産税業務の内容
・相続税の申告書作成・節税対策
・贈与税の申告・贈与スキームの立案
・不動産や自社株式の評価
・譲渡所得の税務処理(特に土地建物の売却時)
・事業承継に関する税務コンサルティング
・遺言書作成支援や民事信託のアドバイス
業務対象者の一例
対象者 | 主なニーズ | 提供する税理士サービス |
富裕層(不動産・金融資産) | 相続・贈与対策、納税資金対策 | 生前贈与プラン・納税シミュレーション |
地主・資産家 | 不動産の評価減や遺産分割対策 | 小規模宅地特例の活用・共有解消提案 |
中小企業オーナー | 自社株式の評価と承継、後継者問題の解決 | 株価引下げ・納税猶予制度・組織再編提案 |
資産税の基本とその重要性
資産税とは、主に以下の3つの税目を指します。
・相続税:亡くなった人から財産を受け取ったときに課される税
・贈与税:生前に財産を受け取ったときに課される税
・譲渡所得税:不動産や株式などを売却した際の利益に課される税
これらは「一生に何度も発生しない」がゆえに、一度の対応ミスが多額の税負担や遺産トラブルを招くという特徴があり、税理士としての適切な支援が求められます。
資産税の特徴
・税額が高額になりやすい(数千万~億単位)
・法人税や所得税と異なり「定期的に発生しない」
・税務・法務・民法・不動産の知識が複合的に必要
・「対人スキル」が非常に重要(家族間の争い回避など)
資産税が重要とされる理由
理由 | 解説 |
税負担が大きくなる可能性がある | 特に都市部不動産や自社株を持つ場合、数千万〜億単位の相続税が課されることも |
納税資金が不足するリスクがある | 不動産しかないケースでは物納や売却を余儀なくされることがある |
相続・贈与トラブルを回避できる | 節税対策と同時に「誰に・何を・どのように」渡すかを設計することで遺産分割争いを防ぐ |
事業承継を円滑に進めるために必要 | 自社株の評価・後継者への移転・税負担軽減をスムーズに行うことで企業の永続性を支える |
資産税に特化した税理士の役割
資産税に特化した税理士は、税務知識だけでなく、民法・不動産・金融・相続心理などへの深い理解を持ち、長期的な資産設計を支援する専門家です。通常の記帳・決算・申告業務とは異なり、資産税は「資産をいかに次世代に効率よく残すか」「円満な相続・贈与・承継を実現するか」が問われる分野です。
主な役割
・クライアントの資産構成や家族構成の把握
・相続・贈与・譲渡などに関する最適な税務提案
・不動産や自社株の評価および評価減のアドバイス
・納税資金の確保と資金計画の設計
・司法書士・弁護士・不動産鑑定士等との専門家連携
・家族間トラブルや遺産分割への事前対策支援
個人向け資産税業務
資産税の個人向け業務は、相続・贈与・譲渡の3本柱に加え、生前対策や遺言、信託の設計といったコンサルティングも含みます。特に「誰に・何を・いつ・どのように渡すか」の最適解を一緒に考えることが求められます。
主な業務内容
・相続税の申告・二次相続対策
・生前贈与プランニング(教育資金・住宅取得資金等)
・不動産・金融資産の組み換え(含み益対策)
・遺言書作成支援・家族信託導入支援
・不動産の評価および評価減テクニック活用
・税務調査の対応と対策
個人向け業務の分類
税目 | 主な業務例 | 特記事項 |
相続税 | 申告、財産評価、遺産分割シミュレーション | 小規模宅地・配偶者税額軽減などの特例あり |
贈与税 | 年間110万円以内の贈与アドバイス | 暦年課税と相続時精算課税制度の選択が重要 |
譲渡所得税 | 土地・建物の売却時の税額試算、取得費調査 | 特定居住用3000万円控除・買換特例などあり |
法人向け資産税業務
法人向けの資産税業務では、特に中小企業のオーナー企業における「事業承継」が中心テーマとなります。株価評価や後継者への自社株贈与・売却、持株会社設立など、税務と経営の両面からの支援が求められます。
主な業務内容
・自社株式の評価・圧縮スキームの構築
・事業承継税制(納税猶予制度)の活用
・オーナーの退職金・資産移転計画の設計
・組織再編(持株会社化、会社分割等)のアドバイス
・M&Aに伴う譲渡所得税対応
法人オーナー向けの支援内容
課題 | 説明 | 税理士の支援策 |
自社株評価が高すぎる | 贈与・相続時の税負担が重くなる | 類似業種比準価額→純資産価額への切替、配当引下げなどで株価圧縮 |
後継者がいない | 親族外承継・M&Aも含めた選択肢が必要 | 税制支援のある親族外承継の支援、株式譲渡時の税務計算など |
納税資金の確保 | 高額な相続税・贈与税が発生することに対する不安 | 相続時精算課税制度、保険活用、物納や延納の計画支援 |
相続税における税理士の専門性
相続税申告業務は、税理士に求められる専門分野の中でも特に高度な知識・実務経験・人間力が必要とされる領域です。評価の難しい不動産、自社株、非上場株式などの資産に加え、民法上の遺産分割や家族間の感情的調整にも関与するため、一般的な法人・所得税業務とは異なるスキルが求められます。
必要とされる専門性
・財産評価基本通達に基づく評価能力(路線価、不整形地補正、貸家建付地など)
・相続財産の漏れや課税リスクの洗い出し
・配偶者税額軽減・小規模宅地等の特例などの適用判断
・遺産分割のシミュレーションと最適化
・争族を回避するための調整力・対人対応力
・他士業(弁護士・司法書士・不動産鑑定士等)との連携スキル
相続税の基本と税理士の関わり
相続税は、人が亡くなったときに、その財産を引き継ぐ人に課される税金です。遺産総額が基礎控除額を超える場合、相続税申告が必要となり、10ヵ月以内の申告・納税が義務付けられています。
相続税の基本
・課税対象:不動産、預金、有価証券、事業用資産、みなし相続財産(生命保険など)
・申告期限:被相続人死亡日の翌日から10か月以内
・基礎控除:3,000万円+600万円×法定相続人の数
・税率:累進課税(10%~55%)
税理士の主な関与ポイント
・財産のリストアップと評価
・各種特例(配偶者控除、小規模宅地、障害者控除など)の適用判断
・遺産分割シミュレーションと節税パターン提案
・納税方法の提案(延納・物納・納税資金対策)
・二次相続を見据えた総合提案
・申告書の作成と税務調査対応
相続税申告の流れ
ステップ | 内容 | 税理士の関与内容 |
① 財産調査 | 不動産・預貯金・保険・債務等を調査 | 財産目録の作成・評価・漏れの洗い出し |
② 財産評価 | 路線価、不整形地、貸家建付地等を反映した評価 | 評価減の工夫、資料収集、現地確認 |
③ 分割協議 | 相続人間での分割方法の合意 | 節税+公平性を考慮した分割提案 |
④ 申告書作成 | 相続税申告書、附属書類の作成 | 特例適用判断、ミスのない書類整備 |
⑤ 納税・アフターケア | 納税手続き・税務調査対応・二次相続対策の再設計 | 延納・物納の検討、再評価・再提案 |
相続税対策の重要性
相続税は一度に多額の現金納税が必要になることから、「何もしない=資産の大幅な目減り」につながることもあります。特に都市部の不動産や自社株を保有する家庭では、生前からの継続的な対策が不可欠です。
なぜ相続税対策が重要なのか
・相続発生後では適用できない特例が多い(贈与、信託、生命保険など)
・分割トラブルを未然に防ぐことができる
・納税資金を確保できず、資産売却・経営混乱を招くリスクがある
・二次相続を意識した分割設計が必要
・税務調査のリスクを減らす(申告の精緻化)
よくある対策方法と効果
対策内容 | 概要 | 節税・効果 |
生前贈与(暦年贈与) | 毎年110万円以内の非課税枠を活用 | 長期的に財産を移転し税負担軽減 |
小規模宅地等の特例 | 居住用・事業用土地の評価を最大80%減額 | 数千万円単位の評価引下げが可能 |
生命保険の非課税枠利用 | 500万円×法定相続人分まで非課税 | 納税資金の準備+非課税枠活用 |
家族信託 | 判断能力低下前に資産の管理・承継を委託 | 認知症対策+円滑な資産移転 |
自社株の評価圧縮・贈与 | 承継前に評価を引下げて贈与または移転 | 事業承継税制の活用と併用可能 |
資産税専門の税理士として選ばれるポイント
資産税業務は一度の報酬単価が大きい反面、比較検討されやすい分野でもあります。顧客は「この先生なら安心」と思えるだけの根拠を求めています。
選ばれるための主なポイント
・専門性の高さ:相続・贈与・譲渡の評価減・特例適用に強く、提案力がある
・実績の明示:相続税申告件数、税務調査の否認ゼロなどの信頼できる数字
・対人コミュニケーション力:感情に寄り添い、丁寧に説明できる(特に高齢者・相続人複数)
・節税+納税資金対策の両立提案:机上の理論だけでなく、実行可能なスキーム設計
・ワンストップ対応:弁護士・司法書士・不動産鑑定士・保険業者などとの連携
・発信力・ブランディング:資産税専門としてのWebやSNS、セミナー、書籍等での露出
・タイミングを逃さない支援:生前対策から発生後の申告、二次相続まで一貫支援できる
他の税理士と差別化できるポイント
差別化ポイント | なぜ選ばれるか? | 具体的な取組み事例 |
財産評価スキル | 同じ土地でも数百万~数千万の差が出ることがある | 不整形地補正・セットバック・貸家建付地評価等の活用 |
提案力の豊富さ | 特例の適用組み合わせにより納税額が半分以下になるケースも | 小規模宅地+配偶者控除+生前贈与+信託をパッケージ化 |
トラブル対応・調整力 | 感情的な相続人間の争いを防ぎ、納得できる形に導くことができる | 遺産分割案を税負担・公平性の観点から第三者として設計 |
他士業との連携ネットワーク | ワンストップで手続きが進められることで顧客が安心する | 弁護士・不動産鑑定士・登記司法書士・保険業者とのチーム構築 |
事例や実績の見える化 | 顧客は「選ばれる理由」を数字や具体事例で確認したい | ホームページや面談時に「○件以上対応」「税務調査是認率○%」等提示 |
資産税専門税理士のキャリアパス
資産税専門税理士としてのキャリアは、「経験 × 評価スキル × 対人対応力 × 信頼」が軸となります。通常の法人税務や会計業務と異なり、「案件ごとの単価が高い」「比較検討されやすい」「紹介・口コミが多い」という特徴があり、早期に専門性を高めることが重要です。
主なキャリアステージ
ステージ | 役割・経験内容 | 目安年数 |
スタート期 | 資産税案件の補助業務(評価、資料収集、申告書作成)を経験 | 1~3年 |
実務構築期 | 一連の相続税申告を自走で対応可能に。土地評価・特例適用判断・分割案の提案も含む | 3~5年 |
専門家認知期 | 税務調査対応、生前対策の提案、金融機関・士業ネットワークとの連携が可能になる | 5~10年 |
ブランド確立期 | セミナー登壇・書籍執筆・メディア発信・資産税チームの構築と育成 | 10年~ |
必要な資格とスキル
資産税業務に特化するためには、税法・評価・民法・対人スキルの総合力が問われます。以下に、必須・推奨の資格やスキルを整理します。
必要な資格・知識
・税理士資格(必須):相続税法の選択が望ましい
・宅地建物取引士・不動産鑑定士(任意):不動産評価の深掘りに役立つ
・FP1級・CFP(推奨):資産全体の設計、生命保険や相続対策の提案に活用
・民法・信託法の理解:遺言・遺留分・家族信託などの提案に必要
必要なスキルセット
スキルカテゴリ | 具体的内容 |
税務スキル | 財産評価通達の理解、特例適用判断、申告書作成力 |
不動産知識 | 路線価・倍率方式、借地権、底地、区分所有などの特性理解 |
コミュニケーション | 高齢者・家族間での話し合いサポート、感情に配慮した説明・提案力 |
法務リテラシー | 民法(相続・遺留分・共有)や信託・遺言書作成支援などの法的な基礎理解 |
コンサル力 | 二次相続まで見据えたトータルプランニング、節税と分割と納税資金の最適化提案 |
情報発信力 | Web/SNS/セミナーなどでの専門性アピール、ブランド構築 |
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資産税業務に特化した税理士の仕事内容とキャリアパス -まとめ
この記事では資産税に強い税理士の仕事内容とそのキャリアパスについて解説させていただきました。
この記事がお役に立てば幸いです。

平川 文菜(ねこころ)