ミツプロに会員登録する
3つのメリット

無料で会員登録する

INDEX

おすすめ記事

記事を全て見る

経営コンサルタントとして活躍する税理士のメリットとキャリアパス

公開日:2025/05/29

最終更新日:2025/05/29

INDEX

「税理士=申告書作成と節税アドバイス」そんな時代は終わりを迎えようとしています。

昨今、多くの税理士が直面しているのが「顧問料の下落」と「業務の機械化」です。会計ソフトやAI技術の進化により、単純な記帳・申告業務の価値が相対的に低下する中、税理士に求められる役割は大きく変わってきました。

今、求められているのは「過去の数字を整理する人」ではなく、「経営の未来を共に考えるパートナー」です。つまり、経営の課題解決に踏み込む“コンサル型税理士”へのシフトが進んでいるのです。

本記事では、税理士が経営コンサルタントとして活躍するメリットや、具体的にどのようなキャリアパスが描けるのかを詳しく解説します。税理士資格を持つ皆さんが、これからの時代を生き抜くヒントとなれば幸いです。

会員限定公開!【2025年版】
働きがいのある会計事務所特選
2025年版 働きがいのある会計事務所特選
優良事務所90社のインタビューから、税理士業界の最新動向と事務所選びのポイントを凝縮した業界専門誌を無料公開中!
ミツプロ会員は会計事務所勤務に役立つ限定コンテンツをいつでも閲覧できます。

⇒無料で会員登録して雑誌を見る

税理士が経営コンサルタントとして活躍する背景

中小企業経営者の「相談相手」がいない問題

日本の中小企業は、いまさまざまな経営課題に直面しています。人手不足、コスト高騰、売上減少、後継者不在……。こうした課題に悩む経営者の多くが口を揃えて言うのが、「誰に相談すればいいかわからない」という言葉です。

銀行や商工会議所、外部のコンサルタントなど支援の選択肢はありますが、日常的に数字と向き合い、経営実態を把握している存在、それが税理士です。

実際に、中小企業庁の調査においても、中小企業の一番の相談相手として「税理士・会計士」が挙げられています。

税理士は「経営のリアル」に最も近い専門家

税理士は、クライアント企業の財務諸表を定期的にチェックし、資金繰りや利益の状況を把握しています。つまり、社長以上に数字に強く、冷静に現状分析ができる立場にあります。

その立場を活かし、「ただの申告書作成者」から「経営改善のアドバイザー」へと進化する税理士が増えています。中には、「財務顧問」「外部CFO」といった名称でサービス提供を行い、コンサルフィーを得ている事例も少なくありません。

税理士業界の競争激化と差別化の必要性

税理士業界は現在、競争が激化しています。登録者数は増加傾向にある一方で、会計ソフトの自動化により「単価が下がり続ける時代」でもあります。

そのような中で生き残るには、明確な差別化が不可欠。特に「経営者の意思決定を支援するコンサル型税理士」は、AIでは代替不可能な価値を提供できるポジションです。

また、経営支援ができる税理士は、税務だけでなく経営計画・資金調達・人事戦略など複合的な相談に対応できるため、クライアントとの関係も深く長期的になります。

税理士がコンサルで提供できる主な支援領域

税理士が提供できるコンサルティング業務は、実は非常に幅広く、企業のライフステージや課題に応じて多様なサポートが可能です。以下に主な領域を整理してみましょう。

■ 資金繰り・財務改善支援

多くの中小企業にとって「資金繰り」は常に最重要課題です。税理士は月次決算や試算表を通じて資金の流れを把握できるため、キャッシュフロー改善や金融機関との交渉支援など、実践的なアドバイスが可能です。

・資金繰り表の作成支援
・運転資金の適正化アドバイス
・借入リスケ・資金調達サポート

■ 事業計画・経営改善計画の策定

税理士は財務三表を理解しているだけでなく、「数字から読み解く経営ストーリー」を描く力があるため、経営計画の策定にも最適です。

・中期経営計画の作成支援
・補助金申請(例:事業再構築補助金)の計画書作成
・経営改善計画書のモニタリング対応

■ 管理会計・KPI設計

売上や利益だけでなく、利益率・在庫回転率・LTVなど経営の意思決定に直結するKPIを設計し、可視化・PDCAの定着を支援することも可能です。

・セグメント別の損益把握(部門別、店舗別など)
・業績評価指標の策定と見える化
・BIツール導入のサポート

■ 組織再編・M&A支援

企業の合併・分割・事業承継・買収などに関する税務的スキームの設計と実行支援も、税理士の得意分野のひとつです。

・組織再編税制に対応したスキーム立案
・M&Aにおける財務デューデリジェンス
・スキームに沿った申告書類の作成支援

経営コンサル領域で活躍する税理士のメリット

税理士が経営支援に踏み込むことは、単に顧客満足度を高めるだけではありません。自身のビジネスモデルにも多くのメリットをもたらします。

■ 単価の向上と価格競争からの脱却

「月3万円の税務顧問料」ではなく、「月10万円の経営顧問料」というように、提供する価値が上がることで報酬水準も上昇します。価格競争が激しい税務顧問業務から脱却し、自ら価格を設定できる立場になることが可能です。

■ 長期・継続契約が取りやすい

経営コンサルティングは1回限りのアドバイスでは終わらず、継続的な伴走が求められる領域です。月次の定例MTGやPDCAサイクルを回す支援により、解約率の低い顧客基盤を構築できます。

■ 経営者の信頼を得やすい

「納税額の説明」よりも「どうすれば売上が伸びるか」という話のほうが、経営者は熱心に聞いてくれます。経営課題の解決に貢献することで、相談のハブとしての信頼を築くことができます。

■ 専門家としてのブランディングが進む

「補助金に強い税理士」「病院経営に強い税理士」など、経営支援の実績が蓄積されれば、自然と専門分野での評価が高まり、セミナー・執筆・メディア出演といった副次的な収益機会にもつながります。

経営コンサルタントとしてのキャリアパス

税理士が経営コンサルタントとして成長していくための代表的なキャリアパスを段階的に紹介します。

【ステップ1】税務顧問+簡易的なアドバイス

まずは現在の顧問先に対して、月次試算表をもとにした資金繰り分析や、簡単な財務指標の解説から始めてみましょう。「相談できる税理士」としてのポジションを確立する第一歩です。

・資金繰り表の説明
・売上と利益のズレ要因の解説
・役員報酬の適正化アドバイス

【ステップ2】特定領域への特化(ニッチ戦略)

ある程度の実績が積み上がったら、自分の得意分野や顧問先の業種に特化するのも有効です。

・「建設業専門」「医療特化」「EC事業者向け」など
・補助金専門、KPI構築専門などテーマ特化型
・自分の過去の経験・人脈を活かせる分野を選定

【ステップ3】法人化・チーム化

業務が安定し、案件が増えてきたら法人化し、税務とコンサルで役割を分担できる体制を築くことも可能です。社労士・司法書士・弁護士など他士業と連携し、総合的な経営支援が可能になります。

・コンサル部門と税務部門の分業
・他士業との業務提携によるワンストップ支援
・WebマーケティングやSNSによる認知拡大

【ステップ4】外部CFO、VC支援、教育・発信領域へ

一定のブランディングができると、外部CFOやスタートアップ支援、セミナー講師・執筆といった活動にもつなげることができます。コンサル型税理士の最終ステージともいえるフェーズです。

・ベンチャーの外部CFO
・VC・金融機関との連携支援
・書籍出版・コラム連載・セミナー講師

活躍する税理士コンサルタントの実例

実際に、税務の枠を超えて経営コンサルタントとして活躍する税理士は着実に増えています。以下は代表的な事例です(プライバシー保護のため一部仮名で記載)。

■ 事例1:中小企業の「資金繰り改善」を主軸に支援

東京都で個人開業していたA税理士は、既存の顧問先で資金ショートが相次いだ経験から、「資金繰り専門税理士」としての立場を確立。
自社独自のキャッシュフロー管理テンプレートを活用し、顧問先に資金繰り表の作成を習慣化させる仕組みを構築。現在は20社以上と「財務顧問契約(月額10万〜)」を結び、税務よりも経営支援がメイン業務となっています。

■ 事例2:業種特化型で「医療コンサル」を展開

元医療法人勤務経験を持つB税理士は、「医療機関専門コンサルタント」として独立。
診療報酬と収支構造に精通している点を強みに、医療法人の資金調達、事業承継、スタッフ評価制度の導入支援などを展開。顧問料と別にプロジェクトフィーを設定し、1件あたり50万円以上の支援実績も。

■ 事例3:スタートアップ企業の「外部CFO」として参画

C税理士はベンチャー企業出身というキャリアを活かし、設立間もない企業の「経営パートナー」として、外部CFO業務を受託。
資金調達計画、ピッチ資料作成、株価算定支援などを行い、経営会議にも定期参加。月額契約の他、成功報酬型のストックオプション報酬も導入しており、収益性の高いモデルを実現しています。

会員限定公開!【2025年版】
働きがいのある会計事務所特選
2025年版 働きがいのある会計事務所特選
優良事務所90社のインタビューから、税理士業界の最新動向と事務所選びのポイントを凝縮した業界専門誌を無料公開中!
ミツプロ会員は会計事務所勤務に役立つ限定コンテンツをいつでも閲覧できます。

⇒無料で会員登録して雑誌を見る

まとめ

経営環境が大きく変わり、税理士に求められる役割もまた進化しています。「申告業務」や「節税対策」だけでは、AIやクラウドに代替される未来も遠くないかもしれません。

しかし、経営者の悩みを汲み取り、数字をもとに未来を描くスキルは、税理士だからこそ提供できる価値です。
あなたの専門性を、目の前の試算表だけで終わらせるのではなく、経営の意思決定に活かす力に変えること。それが、これからの時代に生き残る「コンサル型税理士」の姿です。

税理士としての土台に、経営支援という武器を加えることで、より深く、より長く、クライアントとともに成長できる存在になれるはずです。

この記事がお役に立てば幸いです。

執筆 ・ 監修

平川 文菜(ねこころ)

熊本出身。2018年京都大学卒業。在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。