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令和7年度(2025年度)法人税改正の全貌:税理士が押さえるべき主要ポイント


公開日:2025/06/06
最終更新日:2025/06/06
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令和7年度の法人税改正は、実務に直結する重大な変更が多数含まれている点で、税理士にとって見過ごせない内容となっています。新リース会計基準への対応、防衛特別法人税の創設、中小企業税制の見直し、そして国際課税に関するグローバル・ミニマム課税への対応など、従来の枠組みを超えた広範な改正が行われています。
本記事では、改正のポイントを実務目線で整理し、税理士が顧問先に的確なアドバイスを行うために必要な情報を網羅的に解説します。
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新リース会計基準対応:借手・貸手それぞれの税務処理に影響
令和6年9月に公表された「新リース会計基準(企業会計基準第34号)」は、企業会計上のリース取引の処理方法を大きく転換させました。これに伴い、法人税法にも大幅な見直しが行われ、税務と会計のズレ(差異)の整理が必須となります。
新会計基準の概要(借手・貸手で処理が異なる)
区分 | 新会計基準での処理 | 従来の処理 | 会計と税務の関係 |
借手 | 全リースを「使用権資産」「リース負債」としてBS計上 | オペレーティング・リースは賃貸借処理 | 税務は原則変更なし(ただし償却方法に注意) |
貸手 | 第1~3法に区分し継続適用(第2法は廃止) | オペレーティング/ファイナンスに分類 | 第2法の廃止と延払基準の撤廃が実務影響大 |
借手の税務処理(法人側がリース物件を借りる場合)
【1】リースの区分の廃止(会計上)
・ファイナンス・リース/オペレーティング・リースの区分は会計上は廃止。
・全リースについて、「使用権資産」及び「リース負債」を計上。
【2】税務上の対応
税務では以下の通り、リース形態ごとに異なる扱いが残ります。
リース形態 | 税務処理 | 補足 |
所有権移転ファイナンス・リース | 減価償却資産として通常の方法で償却 | 自己所有資産と同様 |
所有権移転外ファイナンス・リース | 「リース期間定額法」で償却 | 改正により残価保証額を控除せず償却可能に |
オペレーティング・リース | 支払賃借料として損金算入 | 従来通り賃貸借扱い(法53条) |
【3】リース期間定額法の見直し(ポイント)
・改正前:償却限度額 =(取得価額-残価保証額)÷リース期間
・改正後:償却限度額 = 取得価額 ÷ リース期間
・→ 残価保証額を控除せず、最終的に1円まで償却が可能。
▷ 経過措置:既存契約への対応
・経過措置により「経過リース期間定額法」を選定可能。
・所得計算の安定を図るためには、届出が必須(令和9年3月31日までに事業開始)。
貸手の税務処理(リース物件を貸す場合)
【1】3つの処理方法と会計・税務対応
法 | 会計処理内容 | 税務処理 |
第1法 | 初日に売上(リース料総額-利息)と売原価を計上 | 会計通り益金・損金処理 |
第2法 | リース料を毎期売上、利息相当額を控除 | 廃止(延払基準特例も廃止) |
第3法 | 元本回収と利息を分けて毎期処理 | 会計通り益金・損金処理 |
【2】延払基準の廃止
・延払基準(第2法)の特例は撤廃され、新基準に準拠。
・経過措置あり:
◦令和9年3月31日以前の旧契約については、旧基準により引き続き益金・損金算入可能。
◦一括計上または5年均等の選択肢あり。
実務上の対応ポイント(税理士向け)
・会計基準変更の適用時期(令和9年4月以降)に備えた事前確認
・「リース期間定額法」を用いているかどうかの棚卸し
・経過措置を利用する場合の届出期限・対象資産の整理
・会計システムや税務ソフトの設定変更の確認
・リース契約の財務分析(負債比率・償却スケジュール)への影響試算
防衛特別法人税の創設
防衛特別法人税は、令和7年度税制改正により創設された新たな付加税であり、2026年(令和8年)4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。
制度の概要
納税義務者
法人税の納税義務があるすべての法人が対象です。これには、人格のない社団等や法人課税信託の引受けを行う個人も含まれます 。
税額の計算方法
防衛特別法人税の額は、各課税事業年度の課税標準法人税額に4%の税率を乗じて計算されます。課税標準法人税額は、基準法人税額から年500万円の基礎控除額を控除した金額となります 。
基準法人税額は、一定の制度を適用しないで計算した各事業年度の所得に対する法人税の額です。具体的には、所得税額控除や外国税額控除などを適用しないで計算した法人税額を指します 。
税額控除の適用
防衛特別法人税からは、以下の税額控除が適用されます
・外国税額の控除
・分配時調整外国税相当額の控除
・控除対象所得税額等相当額の控除
・仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う防衛特別法人税額の控除
申告・納付手続き
● 申告期限と納付期限
防衛特別法人税の申告期限および納付期限は、法人税と同様に、各課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。
● 中間申告
法人税の中間申告書を提出すべき法人は、防衛特別法人税の中間申告書も提出する必要があります。中間申告の適用は、2027年(令和9年)4月1日以降に開始する事業年度からとなります 。
実務上の留意点
● 中小企業への影響
基準法人税額が500万円以下の法人は、防衛特別法人税の課税対象外となります。そのため、多くの中小企業には直接的な影響は少ないと考えられます 。
● 大企業への影響
基準法人税額が500万円を超える法人は、防衛特別法人税の課税対象となります。特に、海外展開を行っている大企業や公共インフラ関連企業などは、税負担の増加が予想されます 。
税効果会計への影響
防衛特別法人税は、法人税等に該当すると考えられるため、税効果会計の適用が求められます。2025年3月31日までに改正税法が成立した場合、2025年3月期決算において、繰延税金資産および繰延税金負債の計算に防衛特別法人税を考慮する必要があります 。
中小企業税制の見直し
中小企業者等の法人税率特例に関して、以下の改正がなされました。
・所得10億円超の企業:800万円以下の所得にも17%の税率が適用
・通算法人:通算グループ内で800万円を按分し、19%の税率に
・適用期限の2年延長:現行制度が令和9年度まで継続
これにより、大規模なグループ企業や10億円を超える中堅企業は、軽減税率の恩恵を一部失う形となります。
区分 | 改正前の税率(800万円以下の所得部分) | 改正後の税率(800万円以下の所得部分) | 適用対象 | 備考 |
中小法人(所得10億円以下) | 15% | 15% | 資本金1億円以下の普通法人等 | 軽減税率の適用期限が2027年3月31日まで延長されました。 |
中小法人(所得10億円超) | 15% | 17% | 同上 | 高所得の中小法人に対する軽減税率が引き上げられました。 |
中小通算法人等 | 15% | 19% | グループ通算制度を適用する中小法人等 | 通算法人は軽減税率の適用対象から除外されました。 |
中小法人以外の普通法人 | 23.2% | 23.2% | 資本金1億円超の法人等 | 改正なし。 |
公益法人等・協同組合等(所得10億円以下) | 15% | 15% | 一般社団法人、協同組合等 | 軽減税率の適用期限が2027年3月31日まで延長されました。 |
公益法人等・協同組合等(所得10億円超) | 15% | 17% | 同上 | 高所得の法人に対する軽減税率が引き上げられました。 |
中小企業経営強化税制の改正と新類型の追加
● 制度の再設計
既存のA類型(生産性向上設備)、B類型(収益力強化設備)の要件が厳格化されたほか、暗号資産マイニング用途の設備がすべて除外されました。
● C類型(デジタル化設備)は制度から除外
これまで人気の高かったC類型が除外されたことは、多くの中小企業にとって大きな影響となります。
● 売上高100億円超を目指す企業向け新類型の創設
投資利益率7%以上を前提に、60億円までの設備投資に即時償却や税額控除が認められます。
グローバル・ミニマム課税(GloBEルール)への国内対応
OECDによる国際合意に基づき、日本でもグローバル・ミニマム課税が令和8年4月以降適用開始となります。対象は、年間総収入7.5億ユーロ超の多国籍企業です。
・QDMTT(国内最低税額補完税):日本で15%課税が確保されれば、他国からの課税を回避できる仕組み
・IIR・UTPR:国外に所在する軽課税対象の子会社に対する包括的課税ルール
税理士としては、グローバル展開するクライアントに対し、税率比較・負担分析の支援が求められます。
外国子会社合算税制(CFC税制)の見直し
● 合算時期の延長
従来の「決算日から2ヶ月経過日」から「4ヶ月経過日」へ変更されました。これは実務の猶予期間として歓迎されるものです。
● 添付書類の簡素化
損益計算書や貸借対照表は引き続き必要ですが、株主資本等変動計算書などは添付対象から除外されました。
税理士が対応すべき実務ポイント
1. 【改正制度の適用対象判断と届出支援】
・クライアントが中小企業特例、投資促進税制、防衛特別法人税等の対象か確認。
・新リース会計基準に伴う「経過リース期間定額法」適用には届出が必要。
・特例適用には税額計算方式や償却方法の選定が伴い、顧問先への制度説明が不可欠。
2. 【申告書・別表の変更対応】
・防衛特別法人税は法人税申告書別表に新欄追加予定 → 記載ルールの把握必須。
・延払基準廃止に伴い、旧リース契約の益金・損金の計上時期を再評価。
・グローバル・ミニマム課税適用企業では、国別の課税分析が必要。
3. 【システム・会計処理・アドバイスのアップデート】
・リース会計、償却方法、税額控除判定など、会計ソフトへの反映要。
・中小企業経営強化税制の改正を踏まえた投資提案や事前確認支援。
・グループ通算制度適用法人への税率変化(15%→19%等)の説明資料整備。
税理士のための 実務対応チェックリスト
分野 | 改正内容 | 実務対応のポイント | 必要なアクション |
リース税制 | 新リース会計基準導入 | 会計と税務の乖離に注意 | 償却方法の確認・届出書類の提出(経過措置) |
防衛特別法人税 | 新税創設(4%) | 基準法人税額の把握・別表欄追加予定 | 顧問先が対象かを確認し、申告準備 |
中小企業税制 | 10億円超で税率引上げ | 税率適用の見直し(15→17%) | 顧問先の所得規模・通算関係の確認 |
経営強化税制 | C類型削除、新類型追加 | 設備要件・償却可否・投資利益率判定 | 対象設備と税額控除内容の精査 |
グローバル課税 | ミニマム課税導入 | MNEの課税状況分析が必要 | 国別税率調査・QDMTT適用有無判断 |
別表・申告書 | 別表変更・新別表追加 | 法令改正に伴う記載内容の見直し | 使用ソフトのアップデート確認 |
顧問先支援 | 説明責任と戦略提案 | 税額影響・申告方法の案内 | セミナー資料、QA集の作成 |
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まとめ
今回の法人税改正は、税理士にとって単なる制度対応以上の意義があります。顧問先への提案力を高め、変化をチャンスに変える絶好の機会です。特に、補助金・設備投資・税額控除といった「攻めの税務支援」ができる税理士こそが選ばれる時代。制度を知って終わるのではなく、「どう使うか」まで落とし込むことが、これからの税理士像に求められると言えるでしょう。
この記事がお役に立てば幸いです。

平川 文菜(ねこころ)