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転職・就職に強いのはどっち?日商簿記と全商簿記の活用法

公開日:2025/06/26

最終更新日:2025/06/26

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簿記資格を取得しようと考えたとき、「日商簿記」と「全商簿記」、どちらを選ぶべきか迷った経験はありませんか?
それぞれ、目的とキャリアによって“強み”は異なります。

本記事では、それぞれの資格の特徴や評価のされ方、活用法の違いを整理し、転職・就職で本当に役立つ選び方を解説します。

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日商簿記とは?~企業が認めるスタンダード資格

日商簿記(正式名称:日本商工会議所主催簿記検定)は、全国の企業や会計業界で高く評価されている資格です。

特徴

全国的な知名度:ビジネスの現場で広く浸透しており、履歴書に書くだけでもアピール効果があります。
信頼性の高さ:企業の採用条件・昇進基準に明記されることも。
実務との親和性:会計・経理の仕事に直結した出題内容。

難易度別のレベル感

目安 活用領域
1級 会計専門職 上場企業・監査法人
2級 経理担当者 中堅企業の経理部門
3級 経理の基礎 一般事務や新卒採用
初級 入門 学生や未経験者向け

特に2級以上は実務力の証明となり、転職市場での評価も非常に高いのが特徴です。


全商簿記とは?~教育現場での実践的資格

全商簿記(正式名称:全国商業高等学校協会主催簿記実務検定)は、主に商業高校の生徒向けに設計された資格ですが、一般受験も可能です。

特徴

教育との連携:商業高校の授業と連動しており、教科書的な知識を体系的に学べる。
基礎力の養成に適する:仕訳や帳簿作成など、日常業務で役立つスキルが段階的に習得可能。
就職活動に有効:特に高校卒業後の就職を狙う人にとっては武器になります。

難易度別の構成

相当するレベル 主な内容
1級 日商2級相当 原価計算・会計分野に分かれる
2級 日商3級相当 仕訳・試算表など
3級 入門〜基礎 簿記の初歩

高校生や初学者にとって入りやすい構造になっています。


評価の違い:企業での認知度は日商簿記が圧倒的

1. 企業内での“知名度”の差

日商簿記は、日本商工会議所が主催する全国統一の検定で、長年にわたり実務での信頼性を築いてきました。多くの企業の人事・経理部門がその存在を認識しており、「簿記=日商簿記」と理解している企業担当者も少なくありません

一方、全商簿記は、もともと商業高校向けに設計された資格であり、教育現場での評価は高いものの、企業の現場での知名度は限定的です。採用担当者の中には、全商簿記自体を知らないケースもあるほどです。

例:

・採用面接で「日商2級保持」と伝えればスキルレベルの基準が伝わる。
・全商1級を伝えても「どの程度のレベルか」が伝わらず、補足説明が必要になる。

2. 採用時の評価基準の違い

企業は即戦力や実務的スキルを重視する傾向があるため、出題内容がより実務寄りで、難易度の高い日商簿記が高評価を得やすいです

特に以下のような職種では、日商簿記2級以上の取得が「応募条件」や「歓迎条件」として明記されることもあります:

・経理・財務職(特に中途採用)
・会計事務所
・税理士法人や監査法人のアシスタント職
・金融機関・コンサルティング業界

一方、全商簿記は新卒採用や高卒採用の場面では「基礎力がある」として評価されることはあるものの、中途採用や専門職への応募では「不足」と見なされるケースもあります。

3. 社会人資格としての“信頼性”

社会人になってから取得した資格として、履歴書で強い印象を与えるのは日商簿記です。特に2級以上の資格は、以下の点で信頼性が高く評価されます:

・難易度の高さ(合格率の低さ)
・出題範囲の広さ(商業簿記・工業簿記を含む)
・実務的な力(仕訳、試算表、財務諸表の理解)

これに対し、全商簿記は「高校時代の履修成果」と見なされる傾向が強く、「社会人になってからの努力」や「実務力の証明」としては弱くなります。

4. 履歴書・面接での印象の違い

観点 日商簿記 全商簿記
資格欄での印象 「仕事に使える資格」という印象 「高校での基礎的な知識」という印象
面接時の評価 実務能力や学習継続力の証明 学習意欲や基礎の理解を評価
説明不要性 レベル感を言わずとも伝わる 「日商でいうと何級相当か?」の説明が必要


5. 採用担当者の“リアルな声”

企業人事の実務担当者の視点では、次のような傾向があります:

「全商簿記1級」と履歴書に書かれていても、「それって日商でいうと何級くらい?」と社内で確認される
・一方、「日商2級」は、「あ、この人は経理の実務をある程度こなせそうだな」とすぐに伝わる。

比較項目 日商簿記 全商簿記
企業での認知度 非常に高い 教育機関中心
採用時の評価 中途・新卒共に評価 主に新卒向け
社会的信頼性 転職市場でも評価 基礎スキルの証明に限定的

実務力・試験難易度の比較

簿記検定には「実務力」をどれだけ鍛えられるかという観点と、「試験としてどれだけ難しいか」という観点の両方があります。
日商簿記と全商簿記では、この2つの軸で明確な違いがあります。

1. 日商簿記の特徴:実務志向で高難度

実務力の高さ

日商簿記は、会計・経理業務の現場を意識した設計がされています。出題内容は以下のような「実務そのもの」です。

・実際の伝票仕訳や帳簿記入
・決算書の作成と読み取り
・損益分岐点分析、財務諸表分析(2級以上)
・原価計算・連結会計(1級)

つまり、「この知識があれば、経理の仕事を一定程度こなせる」と企業が判断できる資格です。

難易度(合格率)

合格率 特徴
1級 約10% 会計士・税理士の登竜門。国家試験に匹敵する難度
2級 約25% 経理職として実務に就くための実力を問う
3級 約40% ビジネスパーソンの基礎力、会社員全般に有用

※合格率は受験者数に対しての目安であり、難易度の高さを如実に示しています。


特筆すべき点

・出題パターンが多様で毎回変化する
・自分で思考して解法を組み立てる問題が多い
・商業簿記と工業簿記の両方が出題される(2級以上)

2. 全商簿記の特徴:教育指導型で取り組みやすい

実務力の範囲

全商簿記も帳簿作成や仕訳の基礎はカバーしており、商業高校などでは「実務訓練」として重宝されています。

ただし、日商に比べて次のような制限があります。

・応用的な会計処理や複雑な論点は少なめ
・出題形式がパターン化されており、「訓練すれば取れる」タイプの試験

難易度(合格率)

合格率 日商との比較
1級 約30% 日商2級程度のレベル感
2級 約45% 日商3級相当
3級 約60% 入門~初級

難易度としてはやや易しめ。そのため、初学者にとっては成功体験を得やすく、学習継続のモチベーションにつながるという利点があります。


特筆すべき点

・学習指導要領に沿った設計
・出題形式が毎年一定で、学校教育にフィット
・商業高校などの授業と一体で学べる

3. 実務即応性 vs 試験対応力

比較項目 日商簿記 全商簿記
実務への即応力 ◎ 現場即戦力 △ 補助レベル
出題の難しさ ◎ 複雑・多様 ○ 標準化されている
学習時間の目安(2級) 150~200時間 60~100時間
試験設計思想 ビジネス実務準拠 教育現場準拠

全商簿記は「教科書的な処理」が中心であり、ある程度の訓練で合格できる点が特徴です。
一方、日商簿記は「実際の業務にどう活かすか」という視点で作られており、知識を応用する力が問われます。


4. どちらを目指すべき?

目的 選ぶべき資格
経理・会計のプロを目指す 日商簿記2級以上(+1級で専門職へ)
高校からの就職・推薦入試 全商簿記1級(+日商3級で強化)
基礎から始めて段階的に力をつけたい 全商3級 → 全商1級 → 日商2級
転職・キャリアチェンジを有利に進めたい 日商簿記2級以上が必須レベル


活用法の違い:どのように武器にするか?

簿記の資格は「持っているだけ」では評価されにくく、履歴書でどう伝えるか、面接でどう活かすか、どの職種で評価されるかといった「使い方」によって真価が問われます。 日商簿記と全商簿記では、活用シーンが大きく異なります。

1. 日商簿記の活用法:社会人・実務志向の最強ツール

(1)履歴書でのアピール方法

2級以上は堂々と「資格欄」に記載すべき
1級保有者は、「特記事項」や自己PR欄で努力量・専門性を強調すると効果的
・記載例:
  資格欄:日商簿記検定2級(2024年6月取得)
  特記事項:経理職を目指し、実務レベルの簿記力を独学で習得。

(2)面接での使い方

知識だけでなく、努力のプロセスを語るのがコツ。
 「仕事をしながら◯時間かけて勉強し、合格まで継続したこと」など、継続力や目的意識もアピールポイントになります。

・実務職種を希望する場合は、「簿記で学んだ財務諸表分析の視点をどう活かせるか」など、実践への応用例を示すと効果的。

(3)有利になる職種・業界

経理・財務部門
会計事務所/税理士法人
・銀行・保険会社・証券会社などの金融業界
・経営企画、事業管理など数字を扱う職種
・コンサルティングファーム(特に会計・業務改善系)

2. 全商簿記の活用法:高校生・初学者向けの実績証明ツール

(1)履歴書でのアピール方法

1級取得者は「資格欄」に記載して問題なし。
・ただし中途採用や実務職種での印象は弱いため、補足説明が重要です
 記載例:
  資格欄:全商簿記検定1級(会計)
  補足:日商簿記2級を目指し現在学習中。高校時代に会計を中心に学習。

(2)面接での使い方

学習意欲・誠実さ・几帳面さをアピール。
 例:「授業に加えて自主的に演習問題を繰り返し、1級まで取得しました。基礎からの積み上げが得意です」など。
・初学者や高卒者の応募では「商業教育を真面目に受けてきた」ことの証明になります。

(3)有利になる職種・業界

・一般事務職
・営業事務、営業アシスタント
・販売・流通業界の経理補助
・中小企業の経理・会計補佐
・教育業界(商業高校教員など)

活用対象 日商簿記 全商簿記
履歴書の印象 実務力・専門性の証明 商業教育での基礎力の証明
面接での武器 数字感覚・学習姿勢・即戦力 コツコツ努力型・誠実さ
期待される役割 即戦力・責任あるポジション 補助業務・サポート職
有利な場面 転職・中途採用・キャリア転換 高卒就職・推薦入試・新卒採用

3. 相乗効果を狙う「併用」もアリ!

特に高校生や初学者には、

全商簿記で基礎を固めて
日商簿記にステップアップする

という「併用ルート」が有効です。
全商1級→日商2級の流れは、教育と実務の両方の知識を身につけられる理想的な構成です。

業界別評価:どの業界で求められるか?

業界 日商簿記 全商簿記
会計・監査法人 必須 補助的
銀行・金融業界 重要 補助的
一般企業(経理) 有利 参考程度
小売・流通業界 有効 有効
教育業界 参考 有利

業界の「専門性が高いほど」日商簿記の評価が上がります。逆に、事務職中心の業種では全商簿記でも評価されます。


どう選ぶ?目的別おすすめルート

ケース①:社会人から経理職へ転職したい

日商簿記2級以上を目指すべき
即戦力としての知識・信頼性を証明することが可能です。

ケース②:商業高校から就職したい

全商簿記1級+日商3級の併用が効果的
推薦入試や求人応募時の説得力が高まります。

ケース③:未経験だが簿記を学んでみたい

全商3級 or 日商3級からスタート
学習のモチベーションや理解度に応じて次のステップへ進むことを推奨します。

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まとめ

この記事では日商簿記と全勝簿記の違いについて書かせていただきました。

この記事がご参考になれば幸いです。

執筆 ・ 監修

平川 文菜(ねこころ)

熊本出身。2018年京都大学卒業。在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。