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悪徳税理士もいる!?見抜くためのチェックリスト

公開日:2025/05/26

最終更新日:2025/05/26

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顧問変更の相談を受けたとき、「前任の税理士に不信感がある」と語る依頼者が増えていませんか。
契約書がない、申告内容の説明が一切なかった、違法スレスレの節税を勧められたなど、 これは単なる“性格の不一致”ではなく、悪徳税理士による信頼の裏切りである可能性があります。
被害を受けた顧客は、「もう誰を信じていいか分からない」と不安を抱えています。
だからこそ、我々税理士には、安心感と透明性をもって再スタートを支援する役割が求められます。
本記事では、悪徳税理士の典型的な手口、依頼者への影響、違反行為がもたらすリスクを明らかにします。

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悪徳税理士とは?その特徴と見分け方

悪徳税理士の共通する特徴

悪徳税理士には、以下のような特徴が共通して見られます。顧問先との力関係の非対称性を悪用し、長期的な信頼関係を築こうとしないのが特徴です

主な特徴

報酬の内訳が不明確
 ⇒「一式〇万円」として根拠を示さない

申告書の内容を説明しない
 ⇒顧客に理解を促す姿勢がない

節税と称して違法行為を誘導
 ⇒架空経費計上、二重帳簿の提案など

税務調査で責任転嫁
 ⇒「顧客の指示でやった」と言い逃れ

レスポンスが極端に遅い/無視
 ⇒コミュニケーションの軽視

契約書を交わさない
 ⇒業務範囲や責任範囲が不明確

項目 悪徳税理士の例 良質な税理士の例
顧問契約の説明 契約書なし/内容を曖昧に説明 契約書を提示し、業務範囲と報酬を明確化
節税提案 違法・脱法スレスレの行為を勧める 法令の範囲内でリスクの説明付きで提案
税務調査対応 知らぬ存ぜぬで逃げる 顧客とともに対応、修正申告もサポート
書類の共有・説明 申告書を渡さない、または説明しない 毎回きちんと説明し、質問にも丁寧に対応
連絡手段と対応速度 電話・メール無視、返信が数日後 原則24時間以内にレスポンス

悪徳税理士の手口とその影響

一部の悪徳税理士は、依頼者の無知や焦りを逆手に取り、法令違反すれすれの手法を指南したり、依頼者を巻き込んで脱税に加担させるケースがあります。その結果、最終的に責任を問われるのは納税者自身です

架空の経費計上の指示
 ◦実態のない外注費や仕入を記録させる

現金売上の除外を提案
 ◦レジからの除外、無申告売上を推奨

二重帳簿の作成を指南
 ◦表向き帳簿と裏帳簿を作り使い分ける

減価償却を過度に操作
 ◦固定資産の計上時期や耐用年数の操作

税務調査に虚偽説明を示唆
 ◦「こう答えればいい」と嘘の証言を助言

よくある脱税の手口

悪徳税理士が関与する脱税行為には一定のパターンがあります。代表的な例は以下の通りです。

脱税の典型パターン

手口の名称 内容 発覚のきっかけ
架空経費計上 存在しない外注費や会議費を経費に計上 税務調査で証憑書類の不備を指摘
売上除外 レジ操作や現金回収分を帳簿に記録しない POSデータや取引先の証言との乖離
二重帳簿 表用と実態用の2種類の帳簿を作成 内部告発、元従業員からの通報
架空人件費の計上 実在しない従業員に給与支払を装う 年末調整や住民税通知で発覚
不正な減価償却操作 実際の利用実態と異なる償却を行う 固定資産台帳や現物調査との齟齬


法令違反によるリスク

脱税や法令違反は、金銭的・社会的に極めて大きなリスクを伴います。顧問税理士が原因だったとしても、納税義務者である事業主が最終的に責任を負うことになります。悪徳税理士 についての相談が寄せられた際には、この点についても顧客へお伝えすることが重要になります。

法令違反による主なリスク

加算税・延滞税の課税
 ◦無申告加算税・重加算税が課せられる

刑事罰の可能性
 ◦所得税法違反や法人税法違反で刑事告発

信用の喪失
 ◦銀行融資停止、取引先との関係悪化

行政処分
 ◦代表者個人が税理士業務停止になるケースも

税務調査の常連化
 ◦一度違反が発覚すると数年おきに調査対象に

税務違反とその影響一覧

違反行為 課せられる罰則 その他の影響
売上除外 重加算税(最大35%) 金融機関からの信頼失墜
架空経費計上 過少申告加算税(最大15%) 税務署からの要注意企業認定
二重帳簿作成 刑事告発(脱税額により懲役または罰金) 報道により社会的信用失墜
税務調査での虚偽説明 刑法上の偽証罪や証拠隠滅罪 顧客との関係悪化、業務停止

悪徳税理士を避けるためのチェックリスト

悪徳税理士についての相談が寄せられた際には、以下の点を確認することをお伝えすることが推奨されます。

信頼できる税理士の見極めポイント

1. 初回相談での対応が誠実か

・課題や希望を丁寧にヒアリングし、「自分がその立場ならどうするか」を考えてくれるか。
・「質問しやすい空気感」があるかも重要。

2. 節税と脱税の違いを明確に説明できるか

・例:自宅兼事務所の家賃の按分、配偶者への給与支払いの妥当性など、根拠を持って判断を示してくれるか。
・「これはグレーだけど、調査で否認される可能性がある」と正直に話してくれる税理士は信頼できる。

3. 報酬体系が明示され、業務範囲が文書化されているか

・「基本業務」「オプション業務」の区分が明確。
・契約書に「顧問業務に含まれるもの・別料金のもの」を記載しているか確認を。

4. 税制改正や補助金などの最新情報を積極的に教えてくれるか?

・国の制度は年々変化しており、対応が遅れると損をすることも。
・ニュースレターや定期面談などで情報共有してくれる税理士は心強い。

5. クラウド会計やチャット対応など、ITツールに柔軟か?

・freeeやマネーフォワードなどのクラウド対応は必須。
・チャットやZoomでの相談が可能なことも重要な比較ポイント。

6. 他の顧客の声や紹介の有無

・知人・経営者仲間からの紹介がある税理士は、実績や信頼性が高い。
・ネットの口コミも参考になるが、悪質業者は口コミを“買っている”こともあるため注意。

悪徳税理士を避けるためにできること

税理士との顧問契約は、一度締結すると「毎月の顧問料」「申告書作成」「経営相談」などで長期的な付き合いになります。契約後に「失敗した」と気づいても、税務署対応や書類管理の関係で容易に切り替えられないこともしばしばです。

以下のチェックポイントと行動を踏まえて行動をし、悪徳税理士に引っかかるリスクを大幅に減らすよう、お客様にお伝えすることも重要になります。

① 初回面談で見るべきポイント

面談時に“雰囲気だけ”で判断せず、以下の観点でチェックしましょう。

チェック項目 見るべきポイント
✅対応姿勢 話をきちんと聞き、要点を整理して返してくれるか。こちらの業種や背景を理解しようとしているか。
✅ 節税と脱税の違いの説明力 「これはグレーです」「このやり方は税務署で否認される可能性があります」と明言できるか。
✅ 質問への反応 「それは大丈夫です」だけで終わらず、根拠やリスクを説明できるか。曖昧なまま濁さないか。
✅ 書面での説明 口頭だけでなく、報酬表や業務内容を明文化して提示してくれるか。

② 契約前に「契約書」「報酬表」を必ず確認

税理士との顧問契約は、業務内容や報酬条件を契約書で明示することが基本です。特に以下のポイントに注意しましょう。

報酬体系が明確か
 例:記帳代行は月額○円、年末調整は○円/人、決算申告は○円

オプション業務の記載があるか
 例:税務調査立会は日当○万円、融資支援は別料金など

契約の解除条件
 通知期間や違約金の有無も要チェック。解約時に揉めるケースあり。

“業務の範囲”が曖昧でないか
 「税務相談に応じる」とだけ書いてある場合、何が含まれて何が別料金か不明確なことが多い。

③ 複数の税理士に相談・比較する(相見積もり)

1人の税理士だけで決めず、最低2〜3名に相談して比較するのが鉄則です。

・同じ質問をぶつけてみて、説明の仕方や知識レベルを比較する
・安さだけでなく、専門性・IT対応力・信頼感など総合的に判断
・契約を急かす税理士は要注意(「今契約すれば安くなる」など)

④ 紹介か、信頼できるポータルサイト経由を活用

信頼できる紹介ルートから税理士を探すことも重要です。

紹介の例:

・事業仲間・知人からの紹介(特に同業者)
・既存の顧問社労士・弁護士などの士業ネットワーク

ポータルサイトの例:

サイト名 特徴
税理士ドットコム 条件指定検索+口コミあり。相談投稿も可能。
マネーフォワードクラウド会計の税理士紹介 クラウド対応税理士が中心。フリーランス・中小企業に強い。
freeeの認定アドバイザー ソフトに精通している税理士が検索できる。IT対応力も高い傾向。

※ポータルに登録しているからといって100%安全ではありませんが、明確な報酬体系や評価制度がある分、安心感は増します。

⑤ 税理士の“登録情報”を公的機関で確認

税理士登録は国家資格です。以下で「無登録」や「懲戒歴」がないか確認できます。

チェック項目 確認方法
登録の有無 日本税理士会連合会の「税理士情報検索サイト」:https://www.zeirishikensaku.jp/
懲戒歴の有無 税理士会の広報や公表資料(不定期)で確認可能
所属税理士会 地域ごとの税理士会に所属。連絡して照会することも可能

⑥ 契約後も「納得できない点」は放置せず確認

・明細のない報酬請求、連絡が来ない、誤った申告があった等は早めに指摘
・どうしても改善されない場合は、別の税理士への切り替えも検討

顧問税理士の選び方については以下の記事をご参照ください。


悪徳税理士を経て「税理士」への信頼を失った顧客への対応法

前任税理士とのトラブルをきっかけに、税理士そのものへの不信感を抱いた顧客が、近年増加傾向にあります。
これは業界全体への警鐘でもあり、我々には「再び信頼を取り戻す」という、専門性と人間性の両面での対応が求められます。
単に申告や記帳を代行するのではなく、「誠実な伴走者」として信頼を再構築する姿勢が重要です。

信頼を失った顧客の典型的な心理状態

顧客の状態 背景となる体験 感情/リスク
税理士全般に不信感 契約内容の不透明さ、説明責任の欠如 「誰に任せても同じ」「また裏切られる」
自分にも責任があると感じている 言われるがままに脱法行為をしてしまった 罪悪感・自己否定感
税務調査や追徴に怯えている 前任の処理に不正があった可能性 不安・被害者意識
周囲に相談できず孤立している 「恥ずかしくて言えない」「知人紹介だから断れなかった」 無力感・諦め


信頼回復のための対応ポイント

✅ 「否定せず、肯定せず、共感する」姿勢を最優先に
 →「大変な思いをされましたね」と、まず感情を受け止める

感情の処理→事実確認→改善提案の3段階で進める
 →「どうしてそうなったか」より「これからどうするか」に焦点

透明性のある契約・報告体制を初回面談から丁寧に提示
 →業務内容・報酬・スケジュールをすべて書面で共有

税務処理の根拠を都度説明し、確認を求める
 →「なぜこの処理になるのか」を端的かつ論拠付きで説明

二度と同じことが起きないという「再発防止策」を示す
 →チェックフロー、内部監査対応、第三者レビューの仕組みなど

実務と信頼回復を両立させるコミュニケーション設計

対応ステージ 実務面での対応 信頼回復面での対応
初回面談 業務範囲・報酬・手順を明文化し説明 感情を受け止め、無理に質問しない
初回業務着手 必要書類のリスト化、進捗報告を共有 処理根拠を説明し、「安心感」を優先
税務調査対応時 修正申告・リスク評価を冷静に実施 顧客を責めず、「一緒に乗り越える」姿勢で
長期フォロー体制 年1回の方針共有面談+進捗報告の導入 信頼形成の「習慣化」を意識した接点づくり


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まとめ

悪徳税理士が関与した顧問先からの乗り換え相談は、単なる顧客獲得の機会ではなく、信頼回復のプロセスの入り口です。
違法な節税指導や申告書未説明などの行為は、納税者に直接的な損害をもたらし、結果的に税理士業界全体の信頼性を損ないます。
我々税理士は、法令遵守を土台に、正確な説明と健全な助言を積み重ねることで、依頼者の不信を払拭する役割を担うべきです。
悪質な手口や違反行為を知ることで、顧問先を守るだけでなく、業界の健全性を保つ力にもなります。

この記事がお役に立てば幸いです。

執筆 ・ 監修

平川 文菜(ねこころ)

熊本出身。2018年京都大学卒業。在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。