ミツプロに会員登録する
3つのメリット

無料で会員登録する

INDEX

おすすめ記事

記事を全て見る

一人税理士の売上の限界とは?年商1,000万円の壁とは?

公開日:2025/08/05

最終更新日:2025/08/05

INDEX

「一人税理士の売上の限界っていくらなのか?」
独立開業した税理士であれば、一度はこの疑問に直面したことがあるはずです。

「一人でできる仕事には限りがある」
「年商1,000万円が上限だろう」
「スタッフを雇えばいいけど、リスクも増える」

こうした声は非常に多く聞かれますが、本当に“一人”で稼げる上限は年1,000万円程度なのか解説していきます。

会員限定公開!【2025年版】
働きがいのある会計事務所特選
2025年版 働きがいのある会計事務所特選
優良事務所90社のインタビューから、税理士業界の最新動向と事務所選びのポイントを凝縮した業界専門誌を無料公開中!
ミツプロ会員は会計事務所勤務に役立つ限定コンテンツをいつでも閲覧できます。

⇒無料で会員登録して雑誌を見る

一人税理士の平均的な売上規模とは?

まず、一般的な一人税理士の売上モデルを把握しましょう。独立税理士のなかでも「一人で開業・業務をこなしている」場合、年商の目安は以下のようになります。

クライアント数 顧問料(月額) 年間売上(概算)
30件 2万円 約720万円
40件 2.5万円 約1,200万円
50件 3万円 約1,800万円

上記は顧問業務中心のモデルで、決算・年末調整・税務申告報酬などを加味すると、若干増額されます。

しかし、現実としては以下のような課題があり、年商1,000~1,200万円前後で“頭打ち”になるケースが多いです

なぜ一人税理士には「売上の壁」があるのか?

① 時間の限界(1日24時間の壁)

一人税理士は業務のすべてを自分でこなすため、1日あたりの稼働時間には当然限界があります。以下は、平常時の業務時間配分の一例です。

業務内容 所要時間(1件あたり) 月間対応件数の目安(1日8時間前提)
記帳代行・会計入力 1.5時間 約100件(外注なしの場合)
月次監査・チェック 2.0時間 約60件
顧客対応(メール/電話) 0.5時間 約240件(応答のみの場合)
決算・申告書作成 4.0時間 約15~20件/月

例えば、記帳から申告まですべて自分で行っている場合、月に10~15社が限界 です。これを超えると、品質低下や過労のリスクが高まります。

繁忙期(2月~3月)の確定申告では、1件あたりの対応時間が5時間以上かかることもあり、時間的に対応できる数がさらに減ります。

② 単価の限界(価格競争の激化)

顧問料は「地域」「顧客層」「サービス内容」によって異なりますが、多くの一人税理士が中小企業やフリーランスを対象にしているため、月額顧問料の単価は低めになりがちです。

顧問料(月額) 提供サービスの目安 年間売上(30社対応時)
10,000円 記帳代行、年1回の申告サポート 約360万円
20,000円 月次試算表、年末調整・確定申告込み 約720万円
30,000円 月次訪問あり、経営相談含む 約1,080万円

「値上げをしようとしても断られるかも…」という心理的ハードルも高く、労働時間を増やしても売上は比例しにくい構造となっています。

③ 自分にしかできない仕事の多さ(属人化)

「品質は落としたくない」「顧客との関係性を大事にしたい」という思いから、業務を誰かに任せることに抵抗を感じる税理士も少なくありません。

しかし、それが外注やIT化を進めない要因となり、自分の稼働時間に依存した経営から抜け出せなくなってしまいます

業務内容 本来は委託可能? 外注化・自動化の可能性 属人化による問題点
記帳代行 クラウド会計・外注スタッフ 労働集約的で時間を取られる
年末調整・申告 決算テンプレート・チェックリスト ミスの責任を恐れて手放せない
顧客対応 チャットボット・定型FAQ すべて自分で対応し稼働時間を圧迫
営業・新規提案 ホームページ・自動集客 常に“動いていないと不安”

属人化=自分が動かないと回らない状態では、売上の拡大余地が限られます
これを脱するためには、「何を自分がやらないか」を設計する意識が不可欠です。

売上の限界を超える3つのアプローチ

とはいえ、「一人税理士=売上1,000万円止まり」とは限りません。
次のような戦略を取ることで、一人でも年商2,000万円以上を達成している税理士も存在します。

① 高単価業務の導入(補助金・融資支援・相続など)

顧問業務だけでは限界があるため、1件あたりの単価が高い業務にシフトすることで、大幅な収入増が見込めます。

高単価業務の種類 単価目安 特徴・メリット 月2件実施時の年間売上増加額
事業再構築補助金支援 30~50万円/件 中小企業のニーズ大、専門性が高く単価も高い 約720~1,200万円
資金調達(融資支援) 10~30万円+成功報酬 金融機関とのネットワークが武器になる 約240~600万円
相続税申告 30~100万円/件 節税提案や遺産分割対策で信頼を得やすい 約720~2,400万円

これらの高単価案件を月に1~2件こなすだけで、年商は飛躍的に増加します。

② 業務の自動化・仕組み化(クラウド・RPA活用)

“自分がやらなくてもよい業務”を自動化・テンプレート化することで、時間あたりの生産性を大幅に向上させることができます。

対象業務 自動化・効率化ツール例 効果・結果 所要時間の削減率(目安)
記帳・仕訳入力 freee / マネーフォワード 自動仕訳・クラウド連携で入力作業を削減 最大80%削減
顧客対応(定型問答) ChatGPT / チャットボット よくある質問対応を自動化、即レス対応も可能 最大90%削減
決算・申告準備 決算テンプレート / ワークフロー チェックリスト化でヒューマンエラーを防止 最大50%削減
書類作成 RPA / AI-OCR 帳票作成やPDF読取りを自動処理 最大70%削減

これらを駆使することで、より多くの顧客に対応できる=売上が伸びるという構造が生まれます。

③ 情報発信による収益の多様化(講師・執筆・コンテンツ販売)

税理士業務の知見を活かして、知識そのものを収益化するというアプローチも有効です。

・セミナー・ウェビナー開催(1回あたり数万円~)
・noteやUdemy等での講座販売(自動収益化)
・書籍出版やコラム執筆(ブランディングと実利の両立)

「仕組み化×デジタル化」を掛け合わせれば、時間に縛られない収入を得ることも可能です。

成功している一人税理士の実例

ケース①:顧問料ゼロ、補助金支援特化で年商2,500万円

ある税理士は、顧問契約は一切持たず、補助金申請支援に特化するモデルを採用。1件あたり30~50万円の報酬で、年間50件以上を受任し、年商2,500万円を一人で実現しています。

ケース②:YouTube&コンテンツ販売で月商200万円超

別の税理士は、YouTubeで情報発信をしながら、自作のテンプレート・教材を販売。個別コンサルティングも併用し、ほぼ顔出し・外出なしで月商200万円以上を達成しています。

限界を突破するには「ビジネスモデルの再設計」が必要

プレイヤーとプロデューサーの違いとは?

プレイヤー型の税理士は、自らが現場で実務をこなすことで報酬を得ています。一方、プロデューサー型は「自分が動かなくても売上が生まれる仕組み」を設計・運用しているのが特徴です。

視点 プレイヤー型税理士 プロデューサー型税理士
働き方 自分の時間と労力で売上を生む 人・仕組み・デジタルを活用して収益構造を作る
収益モデル 顧問料 × 担当件数(=時間に比例) 高単価業務+コンテンツ販売など(=仕組みに比例)
主な関心 「今日の申告をどうこなすか」 「自分がいなくても売上が生まれるか」
限界 自分の体力・時間・スキルが天井になる 時間を味方につけたスケーラブルな成長が可能

税理士としてのスキルに自信があるほど、「自分が動いた方が早い」「品質は自分でコントロールしたい」と思いがちですが、その発想が“時間の壁”をつくってしまうのです。

「作業者」から「価値提供者」へ:提供価値の再定義が売上を変える

税理士業務における“作業”とは、記帳代行、申告書の作成、年末調整など、法律に従って決められた手続きを正確に処理することです。
これらは機械化・外注化が進み、「誰でもできる仕事」になりつつあります。

そこで必要なのが、“作業者”から“価値提供者”へのシフトです。

項目 作業者型 価値提供者型
顧客の評価基準 ミスなく業務を処理してくれる人 成果や結果(補助金獲得・節税成功)を導く人
サービス内容 記帳、申告、法定業務 資金繰り、補助金、経営戦略、事業承継の助言など
価格競争の影響 顧問料ベースで比較されやすい 「この人に頼みたい」で価格競争を回避できる
売上インパクト 作業量に比例 提供価値 × 単価でスケーラブルに伸ばせる

例えば、月額2万円の顧問契約を5件増やすより、補助金支援1件(報酬30万円)を受けた方が、時間も手間も少なく、高収益です。

実践ステップ:プレイヤーからプロデューサーへ進化するために

一人税理士が、より自由で高収益な働き方にシフトするには、以下のようなステップで「自分の時間を解放する仕組み」を構築する必要があります。

ステップ アクション内容 目的
Step1 業務棚卸と時間の見える化 自分でやらなくてよい業務を特定する
Step2 記帳・定型業務のクラウド化・外注化 時間を創出し、価値提供業務に集中する
Step3 高単価業務を提案・受注(補助金、融資等) 1件あたりの単価を上げ、利益率を向上させる
Step4 自分の知識・経験をコンテンツに変換 自動で売上を生むストック型収益源を構築
Step5 SNSやYouTube等での価値発信 顧客から「選ばれる存在」になるためのブランド化

会員限定公開!【2025年版】
働きがいのある会計事務所特選
2025年版 働きがいのある会計事務所特選
優良事務所90社のインタビューから、税理士業界の最新動向と事務所選びのポイントを凝縮した業界専門誌を無料公開中!
ミツプロ会員は会計事務所勤務に役立つ限定コンテンツをいつでも閲覧できます。

⇒無料で会員登録して雑誌を見る

まとめ

「一人税理士だから売上は1,000万円が限界」
そう思ってしまうのは、昔ながらの顧問型ビジネスモデルに囚われているからかもしれません。

以下のポイントを意識することで、売上の壁は突破可能です。

・高単価業務へのシフト
・自動化・仕組み化による生産性向上
・情報発信やコンテンツによる収益の多角化

「一人だからこそ自由で柔軟」なビジネスを構築し、売上も働き方も、自分の理想を叶えていきましょう。

この記事がお役に立てば幸いです。

執筆 ・ 監修

平川 文菜(ねこころ)

熊本出身。2018年京都大学卒業。在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。