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税理士業務とは?“記帳代行だけ”で終わらない時代の新しい業務像とは

公開日:2025/06/09

最終更新日:2025/06/09

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かつて「税理士=記帳代行業務」というイメージが支配的でした。しかし今、税理士に求められる役割は大きく変わりつつあります。AIやクラウドの普及により、従来の定型業務は自動化され、「記帳代行」だけでは生き残れない時代が到来しています。

本記事では、税理士業務が直面する課題と進化の方向性、そしてこれからの税理士に必要とされるスキルやサービスについて解説します。

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税理士業界の現状と課題

1. 高齢化と後継者不足

税理士の平均年齢は60歳を超えており、高齢化が深刻化しています。多くの税理士事務所で後継者が見つからず、廃業や事業譲渡に踏み切る例が増えています。この結果、M&Aによる業界再編が活発になり、大手税理士法人による吸収や買収も進んでいます。

2. 人材不足と若手税理士の減少

税理士試験の受験者数は過去10年間で大幅に減少しており、若手税理士の数も減っています。中小事務所では若手の採用・定着が難しく、育成の仕組みが整っていないことも課題です。特に、デジタルスキルを持つ若手人材の不足が、業務の近代化を阻む要因となっています。

3. デジタル化と業務の自動化

クラウド会計やAI OCR(光学式文字認識)の進化により、記帳・仕訳などの定型業務は自動化が進んでいます。従来の記帳代行を中心としたビジネスモデルは通用しづらくなっており、税理士にはより高度な分析・アドバイス業務へのシフトが求められています。デジタル対応に遅れる事務所は、顧客離れや競争力低下のリスクに直面しています。

4. 顧問料の低価格化と価格競争

近年、オンライン税理士サービスが急増し、顧問料の低価格化が進んでいます。「安さ」を売りにしたサービスとの価格競争が激化し、中小事務所の経営を圧迫しています。特に都市部では新規顧客の獲得競争が激しく、単なる税務処理だけでは選ばれにくい状況になっています。

5. 顧客ニーズの多様化と専門性の要求

顧客のニーズは、単なる税務処理から、経営支援、資金繰り改善、事業承継、相続、M&Aなど、より広範かつ高度なサービスへと拡大しています。これに応えるためには、税理士自身が税務以外の知識や専門性(経営、金融、IT、業界特化ノウハウなど)を身につける必要があります。

6. 業界再編とM&Aの加速

上記の要因が重なり、業界全体では再編が進んでいます。中小の税理士事務所が、大手事務所に吸収されたり、後継者不在によりM&Aで売却されるケースが増えています。規模の経済を活かし、業務の標準化・効率化・サービスの多様化を図る動きが活発化しています。

税理士業務の進化:6つの高付加価値サービス

これからの税理士が目指すべきは、「経営アドバイザー」への進化です。以下の6領域は、記帳代行を超えた“新しい税理士業務”の柱です。

① 経営支援

月次レポートによる業績分析
データに基づく改善提案
KPI設計や資金繰り支援

経営者に「気づき」と「判断材料」を提供することで、顧問料以上の価値を創出できます。

② 事業承継支援

企業価値評価
相続・贈与対策
M&Aや後継者マッチング

2024年〜2034年にかけて40万社が事業承継のタイミングを迎えるとされており、巨大な市場が存在します。

③ デジタル化支援(DX支援)

クラウド会計や勤怠管理システムの導入支援
業務フローの見直しと業務効率化
・補助金活用のアドバイス

顧問先の「働き方改革」に貢献できるのが強みです。

④ 業界特化型支援

・医療・介護・建設・飲食など特化分野に深く対応
業界特有の経費・収益構造を熟知
・同業他社との比較分析や助言が可能

専門性を高めることで価格競争から脱却できます。

⑤ 定額制サービスモデル

サブスクリプション形式による顧問契約
・必要なサービスをパッケージ化
・月額の安定収益を確保し、長期的関係を築く

属人性の高い税理士業務の「仕組み化」が進みます。

⑥ データ活用

AIによる予測モデルの活用
・売上・利益のトレンド分析
・異常値のアラートによる早期対応

「リアルタイム経営」を支援できる存在としての進化が求められています。

高付加価値サービス 内容 具体例 期待される効果
経営支援 会計データを基に経営改善をサポート 月次レポート作成、資金繰り管理、KPI分析 顧問料アップ、経営者からの信頼向上
事業承継支援 事業継続のための税務・法務支援 株式評価、M&A支援、相続対策 高単価業務、承継案件による収益拡大
デジタル化(DX)支援 業務効率化のためのIT導入支援 クラウド会計、勤怠・給与システム導入、電子帳簿 新規顧問先の獲得、差別化
業界特化型サービス 特定業種の事情に応じた専門支援 医療:レセプト管理、飲食:原価分析 専門性のアピール、紹介案件の増加
定額制・サブスクモデル 月額定額の継続課金型の顧問契約 ステージ別料金設計、オプションサービス提供 安定収益化、解約率の低下
データ活用サービス 会計データやBIツールを用いた可視化と助言 異常値検知、利益予測モデル、ダッシュボード導入 課題の早期発見、提案力の強化

税理士に求められる新スキルとは?

なぜ“新スキル”が求められているのか?

従来の税理士業務(記帳・申告)は、AIやクラウドソフトの登場で自動化・低価格化が進行しています。

つまり、「入力・処理」型の業務だけでは差別化できなくなっている。

その一方で、経営者のニーズは高度化し、
・「どうすれば利益を伸ばせるのか?」
・「資金繰りを改善するには?」
・「今後の戦略をどう立てるべきか?」
といった“判断・意思決定のサポート”が求められるようになっています。

税理士に求められる4つの新スキル

スキル 内容 活かせる業務
① データ分析力 数値を基に現状を把握し、課題・傾向を抽出 経営レポート、月次分析、KPI設計
② コンサルティング力 経営者の悩みを引き出し、解決策を提案 経営改善、融資支援、事業計画策定
③ デジタル活用力 クラウド・AI・RPAなどのツールを使いこなす 業務効率化、DX支援、IT導入コンサル
④ 業界特化知識 医療・建設・飲食など、特定業種に深い理解 業界別原価管理、助成金提案、専門顧問


各スキルの詳細と習得方法

① データ分析力

なぜ必要?
経営判断に“根拠”が求められる時代。数字を「読み取る力」が価値になります。

身につけ方
・Excelでのピボットテーブルやグラフ分析
・BIツール(Power BI、Tableauなど)の習得
・会計データ×KPI設計のトレーニング(売上、利益率、LTVなど)

② コンサルティング力

なぜ必要?
「数字は出せるけど、何をすればいいか分からない」という経営者は多く、“提案できる税理士”が選ばれます

身につけ方
・ロジカルシンキング(Why/So What分析)
・ヒアリングスキル(傾聴・質問)
・経営学・マーケティング・資金繰りの基礎知識

③ デジタル活用力

なぜ必要?
顧問先のデジタル化が遅れている場合、“税理士がITアドバイザー”として重宝されます。

身につけ方
・クラウド会計(freee、マネフォ、弥生)の実務経験
・AI OCR(ScanSnap・STREAMEDなど)活用
・IT導入補助金や電子帳簿保存法などの制度理解

④ 業界特化知識

なぜ必要?
汎用的なアドバイスはChatGPTやAIが代替可能。業界固有の課題解決ができるかが差別化の鍵

身につけ方
・特定業界の顧問先を増やす
・業界団体や商工会議所の情報を収集
・建設業なら「工事原価管理」、医療なら「レセプト分析」などの実務知識を学ぶ

今すぐ始めたい変革アクション3選

① デジタルツールの導入(=業務の自動化・効率化)

やること:
・クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生など)の積極活用
・AI OCR(STREAMED、Dr.経費精算など)での証憑読み取り
・チャットボットやRPAでルーティン業務の省力化

なぜやるのか?
・記帳や仕訳作業に使っていた「時間」を削減し、“考える業務”に時間を回せるようにするため。

期待できる効果
・業務時間の30〜50%短縮
・単価の低い業務から脱却できる(→高付加価値サービスへ)

② スキルアップ研修(=コンサル・デジタル・業界知識)

やること
・外部セミナーへの参加
・オンライン講座(Schoo、Udemy、YouTubeなど)でマーケ・経営・DXを学習
・データ分析・財務モデリング(Excel強化含む)を習得

なぜやるのか?
・「税務だけの専門家」では競争力が落ちていく時代。“1段階上の専門性”を身に付けることで、選ばれる存在に。

期待できる効果
・顧問料の値上げがしやすくなる
・単なる作業者ではなく、「相談相手」として見られるようになる

③ 顧客ニーズの調査(=サービス内容の見直し)

やること
・既存顧客にアンケート・面談を実施
 例:「今どんな業務が一番悩ましいですか?」
・月次面談で、“経営の数字”ではなく“経営者の悩み”を聞く
・ホームページやSNSで「新サービス」のテストマーケティング

なぜやるのか?
税理士が思う「便利なサービス」と、顧客が感じる「欲しいサービス」がズレていることが多いため

期待できる効果
・リピート率・紹介率の上昇
・“価格ではなく価値”で選ばれるようになる

補足:転職も選択肢になり得る

今の事務所が、
・古い業務スタイルに固執していてデジタル導入が進んでいない
・経営支援や新規サービスに全く興味がない
・成長の機会が少なく、任される仕事もずっと同じ
という状況であれば、転職は大いに“攻めの一手”になります

特におすすめなのは以下のような転職先:

タイプ 理由
経営支援型の税理士法人 月次分析・事業計画などの経験が積める
クラウド会計を前提とした新興事務所 デジタルリテラシーを鍛えられる
業界特化型の会計事務所 深い専門性が身に付く(例:医療、建設など)
コンサルティングファーム系の税理士法人 DXやM&A等、幅広いスキルが得られる

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まとめ

従来の「作業請負型」から、「経営課題の解決者」へ。これは単なる業務の進化ではなく、「在り方」の変化です。デジタル化と専門性を武器に、税理士は経営者の最も身近なアドバイザーとして、新たな価値を提供できる存在へとシフトしていく必要があります。

AIに仕事を奪われるか?それとも、AIを使いこなして飛躍するか?

今こそ、税理士業務の再定義に挑むタイミングです。

この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

執筆 ・ 監修

平川 文菜(ねこころ)

熊本出身。2018年京都大学卒業。在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。