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経理のやりがいは“数字”だけじゃない!業務を通じて得られる5つの力


公開日:2025/06/09
最終更新日:2025/06/09
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「経理って地味」「毎日ひたすら数字と向き合ってそう」——そんなイメージを持っている方は少なくないかもしれません。確かに、帳簿の記帳や決算書の作成、請求書の管理など、数字を扱う仕事が中心です。
しかし、実は経理のやりがいは“数字”そのものではなく、“数字の奥にある意味”を読み解いたり、“数字を通じて人や組織を支えること”にあります。
本記事では、経理職を通じて身につく「5つの力」をご紹介しながら、仕事としての奥深さや将来性、キャリアの広がりを紐解いていきます。
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経理とは?
経理とは、企業のお金の流れを管理・記録し、正確な数字にまとめる仕事です。具体的には、「日々の取引を帳簿に記録し、決算を作成し、税務申告のもととなる会計情報を整える」役割を担います。
経理の主な業務内容
業務内容 | 概要 |
仕訳・記帳 | 売上や仕入、経費などの取引を会計ソフトなどに記録 |
売掛・買掛の管理 | 請求書の発行や支払い状況の管理、未回収対応など |
経費精算 | 社員が立て替えた費用の内容確認・支払い手続き |
月次・年次決算 | 毎月・毎年の収支を集計し、財務諸表を作成 |
税務対応 | 税理士や顧問先と連携し、法人税や消費税の申告準備 |
給与・社会保険関連(中小企業では兼務あり) | 給与計算や保険料の計上なども担当するケースあり |
経理の役割とは?
単に「数字を記録する人」ではありません。経理の本質的な役割は、以下の通りです。
・経営判断の“材料”を提供する
→ 売上、利益、コスト構造、資金繰りの把握ができる
・社外との信頼関係を支える
→ 正確な決算は、銀行や税務署、株主との信頼の基盤
・会社の“今”と“未来”を見える化する
→ キャッシュフローの予測や予算管理も含まれる
会計との違い
項目 | 経理 | 会計 |
目的 | 日々の取引を正確に記録・処理 | 経営判断のための財務情報を提供 |
対象 | 請求書、領収書、通帳など | 財務諸表、管理会計レポート |
頻度 | 日次・月次で処理 | 月次・四半期・年次で集計 |
経理業務を通じて得られる5つの力
1. 論理的思考力:数字の裏側にある“意味”を読み解く力
経理が扱う数字は、単なる「結果」ではなく、会社の活動そのものの「記録」です。売上が伸びていれば何が起きているのか、経費が増えていればどこにコストがかかっているのか——その背後には必ず原因や背景があります。
経理の仕事では、こうした「数字の異常値」や「前期との違い」に敏感になる必要があります。会計の知識を土台に、「なぜこうなったのか」「何を改善すべきか」と考える習慣がつき、自然と論理的思考力が鍛えられていきます。
特に月次決算や予算管理では、細かな比較分析や根拠のある説明が求められるため、「仮説 → 検証 → 根拠説明」という一連の思考フローが日常業務に溶け込んでいきます。
2. コミュニケーション力:経理は“社内の通訳者”
「経理=内向きな仕事」と思われがちですが、実際には多くの部署と関わる“ハブ”的な役割を担っています。
例えば、
・請求書の処理で営業部門とやりとり
・経費精算で総務部と連携
・月次会議で数字の説明を経営陣に行う
など、社内の各部門と正確かつ円滑な情報共有を行う必要があります。
特に重要なのは、専門用語をかみ砕いて伝える力。会計の知識がない社員にも、「なぜこの経費処理では問題があるのか」や「この支出がどう損益に影響するのか」をわかりやすく説明する力が求められます。
つまり経理とは、“数字”と“現場”をつなぐ“社内通訳”でもあるのです。
経理担当の方がコミュニケーションをとる代表的な場面は以下の通りです。
部署 | やりとり内容 | 必要な伝え方の工夫 |
営業部 | 売上計上・請求書不備の確認 | 売上計上基準を具体例で伝える |
総務部 | 経費精算の処理 | 精算ルールを平易な表現で説明 |
経営層 | 月次報告の数字説明 | グラフ化や比較指標で視覚的に伝える |
システム部門 | 会計ソフト連携時の仕様確認 | 専門用語を共通言語に置き換える |
3. 仕組み化力・改善力:ルーティンの中にある“効率化”の種
経理業務には、記帳、請求書処理、月次締めといった“定型業務”が多く存在します。一見すると単調に思えるかもしれませんが、そこには常に「改善の余地」があります。
改善前 | 課題 | 改善内容 | 効果 |
手入力の支払一覧 | ミスが多い、確認が二重化 | 会計ソフトのCSVインポート機能を活用 | 月10時間削減・転記ミスゼロ |
紙の経費精算 | 書類紛失・承認漏れ | クラウド経費ツール導入 | 承認スピードが2倍に |
毎月の仕訳パターンが属人化 | 担当者依存で品質に差 | 定型パターンをテンプレ化・マニュアル化 | 異動時の引継ぎがスムーズに |
といったように、より正確に、より速く、よりシンプルにする工夫が日々求められます。
このような改善活動を通じて、「仕組み化力」や「業務フロー設計力」が自然と磨かれていきます。ルーティン業務だからこそ、課題を発見し、最適化する力が身につくのです。
4. 数字から戦略を描く力:経営の“地図”を描く参謀役に
経理の本質は「過去の記録」だけではありません。未来の戦略を支える“参謀役”としての役割も担っています。
たとえば、以下のような業務が挙げられます。
業務 | 目的 | 活用例 |
予実管理 | 計画と実績の乖離を把握 | 経費の使いすぎ・売上未達の原因分析 |
キャッシュフロー予測 | 資金不足を未然に防ぐ | 運転資金の確保、金融機関との交渉材料 |
投資判断支援 | 新事業の収支シミュレーション | 開発費や回収期間を試算し意思決定 |
KPI管理 | ビジネスの健全性を可視化 | ROA、限界利益率、回収期間などの指標設定 |
これらはすべて、経理が「未来に向けてどうすべきか」を経営陣に示すための土台です。企業が戦略的に成長するには、数字に裏付けられた意思決定が不可欠であり、その土台をつくるのが経理の仕事なのです。
数字を“読む”だけでなく、“描く”ことができるのが経理の魅力ともいえるでしょう。
5. 信頼される力:正確性と誠実さが武器になる
経理に求められるもっとも重要な資質のひとつが、「正確性」と「誠実さ」です。
税務申告書や決算書にミスがあれば、会社の信用に関わります。支払いが遅れれば、取引先との信頼関係が損なわれます。だからこそ、経理担当者は「ミスがない」「期限を守る」という基本を徹底しなければなりません。
そうした姿勢は、徐々に社内外からの「信頼」につながります。
・「この人なら任せられる」
・「困ったときに相談できる存在」
そんなふうに頼られる経理パーソンは、会社にとって不可欠な存在となります。
これらの能力をまとめると以下の様になります。
力 | 概要 | 将来に活かせる場面 |
論理的思考力 | 数字の異常や傾向を読み取る力 | 企画立案・改善提案などに活用 |
コミュニケーション力 | 部門間の橋渡し・通訳としての調整力 | プロジェクト推進・チーム運営 |
仕組み化力 | 業務効率化・自動化の視点 | 業務改善・DX導入の現場 |
戦略思考力 | 経営判断の土台をつくる力 | 経営企画・財務戦略 |
信頼される力 | 正確さ・誠実さ・責任感 | 組織内でのリーダー的ポジション |
どんな人が経理に向いている?
経理職は、数字を扱うだけでなく、正確さ・継続力・信頼感が求められる職種です。向いている人の特徴を以下のように整理できます。
◆ 経理に向いている人の特徴7選
1. コツコツ作業が得意な人
経理はルーティンワークが多く、毎月同じ業務を正確にこなすことが求められます。地道な作業を積み上げられる人は大きな武器になります。
2. 几帳面で正確性を大切にする人
1円のズレも許されない世界。細かいミスに気づける「慎重さ」と「正確性」は、まさに経理向きの性格です。
3. 物事を論理的に考えられる人
仕訳や帳簿には「なぜこの処理になるのか?」という理由があります。根拠をもって判断できる論理的思考力が重宝されます。
4. 秘密を守れる人(守秘義務を守れる人)
経理は給与・取引先・内部事情など、超重要な機密情報に日常的に触れます。信頼できる誠実さは絶対条件です。
5. 変化に柔軟な人(アップデートに抵抗がない人)
帳簿はアナログからデジタルへ、経理業務はどんどんクラウド・自動化が進んでいます。新しい会計ソフトやツールに前向きな人は今後重宝されます。
6. 人と調整・やり取りするのが苦にならない人
経理は意外と“社内コミュニケーション職”。営業や総務とのやり取り、上司への説明など、社内の潤滑油的役割もあります。
7. 数字を通じて会社の役に立ちたい人
「経営者の意思決定を数字で支える」「資金繰りを支援する」など、会社全体に貢献したい気持ちがある人は、経理として大きなやりがいを感じられるでしょう。
経理に“向いていない”人の傾向
経理に向いていない人の特徴は以下の通りです。
特徴 | 説明 | 経理職におけるリスク・課題 |
細かい作業が苦手 | 数字や伝票を丁寧にチェックするのが嫌い | ミスが多発し、決算や税務処理に影響 |
飽きっぽい・ルーティンが苦痛 | 同じ作業を繰り返すとモチベーションが下がる | 月次処理や記帳業務でミス・遅延が出やすい |
期日や締切を守るのが苦手 | 曜日や日付を忘れがち、スケジュール管理が甘い | 支払遅延や申告期限超過など信用問題に直結 |
数字や会計に興味がない | 会計の仕組みに関心がなく、暗記や作業のみで済ませる | 自主的な成長が止まり、処理ミスの原因に |
感覚・フィーリングで判断しがち | 「なんとなく」で仕訳を決めてしまう | ルール違反や会計基準に合わない処理をしやすい |
秘密を守れない・おしゃべり好き | 社内の給与や経営情報を軽く話してしまう | 機密保持違反で信頼を失い、処分の対象にもなり得る |
人の話を聞かない・確認しない | 勝手な判断で処理を進める傾向がある | 部署間トラブルや誤処理の温床に |
これらの要素が強すぎると、経理の世界ではストレスが溜まりやすくなってしまいます。
未経験からでも向いている人は多い
実務経験がなくても、性格的な適性があれば、経理職として活躍できるチャンスは十分にあります。特に、
・丁寧な対応ができる人
・学生時代に簿記を勉強していた人
・家計管理や数字に興味がある人
は、ポテンシャルがあると考えられます。
働きがいのある会計事務所特選

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まとめ
「経理の仕事って、やっぱり数字ばかりで大変そう……」と思っていた方も、本記事を読んで少し印象が変わったのではないでしょうか。
経理の仕事は、組織の健康状態を可視化し、未来の地図を描く仕事です。そしてその過程で、論理的思考力、コミュニケーション力、仕組み化力、戦略的視点、信頼される力といった、多様な力を身につけることができます。
日々の業務の中にある“気づき”や“やりがい”を見つけながら、経理というキャリアの可能性をぜひ広げてみてください。
この記事がお役に立てば幸いです。

平川 文菜(ねこころ)