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経理の将来性はあるのか?AI時代に生き残るスキルとキャリア戦略

公開日:2025/06/16

最終更新日:2025/06/16

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「経理はAIに仕事を奪われる」そのような言葉が巷でささやかれるようになって久しくなりました。しかし、経理という職種は本当に「なくなる職業」なのでしょうか。ChatGPTをはじめ、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI-OCRなどのテクノロジーが登場し、確かに経理業務の多くは自動化・効率化が進んでいます。一方で、それは同時に「人間にしか担えない経理業務」が改めて浮き彫りになっているとも言えます。

本記事では、AI時代において経理という職種がどのように変化し、どのようなスキルや戦略を身につけることで、キャリアを切り拓いていけるのかについて、現実的かつ前向きに考察していきます。

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なぜ「経理はなくなる」と言われるのか?

1. 定型業務がAIやRPAに代替されやすい

経理の多くの業務は、ルールベースかつ反復的なものです。たとえば以下のような作業:

・請求書や領収書の入力
・仕訳の登録
・振込処理や入出金の記録
・月次・年次の決算整理仕訳
・経費精算の確認

これらの作業は「ルールさえ決まっていれば、機械でも対応可能」です。実際、以下のようなテクノロジーがすでに現場に導入されています:

クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワード等)
 → 銀行口座やクレジットカードと連携し、自動仕訳を作成

AI-OCR(人工知能×光学文字認識)
 → 紙の領収書や請求書を読み取り、自動でデータ化

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
 → 人間の画面操作を模倣し、繰り返し業務を自動化

こうした技術によって、特に「仕訳入力やチェック業務」など属人的でない単純作業はどんどん代替されています。

2. コストセンターとしての立場の弱さ

経理は「売上を生み出す部門(プロフィットセンター)」ではなく、「コストをかけて運営する部門(コストセンター)」です。そのため、企業側から見ると、

・人件費を減らしたい
・バックオフィスの効率化を進めたい
・アウトソーシングや自動化でコストを削りたい

という動機が強く働きやすく、「人間の経理職を減らす」方向に経営判断が傾きやすいのです。特にスタートアップや中小企業では、最初から経理を外注し、内部に人を置かない選択をするケースも増えています。

3. テクノロジーの進化スピードが急速

ここ10年で、経理業務に関するテクノロジーは爆発的に進化しています。
以下のような流れがそれを後押ししています。

技術 具体例
クラウド化 会計ソフト、請求書・経費精算アプリがSaaSで提供され、導入も容易に
AIの実用化 自動仕訳・異常値検知・勘定科目推定などにAIが活用されるように
API連携の普及 銀行・POS・EC・給与システム等と会計ソフトの自動連携が標準化

結果として、「経理の専門知識がなくても処理できる」状態が生まれ、専門人材の必要性が一部で希薄化しています

経理業務についての最新のトレンド分析については以下の記事を参照ください。

それでも「経理の将来性」がある理由

AIの進化と業務自動化の流れの中でも、「経理=なくならない」と言い切れる理由は少なくとも5つあります。単なる「仕訳入力」や「伝票処理」の人材ではなく、「企業経営に不可欠なパートナー」として進化する経理の姿が、ここにあります。

1. 会計判断と責任は人間にしかできない

AIはルールベースでの判断には強いものの、「状況に応じた柔軟な会計判断」や「責任を伴う意思決定」はまだ担えません

たとえば:
経営判断が絡む取引の処理方法の選択
 (リースか資産計上か、税務上の優遇適用の有無など)
取引先の信用状況を踏まえた売掛金管理
リスクに備えた引当金の計上
会計基準の選択や方針変更

これらには高度な判断力と説明責任が伴い、「この判断が適切かどうか」を経営陣に説明するコミュニケーション能力も必要です。

AIは補助的な提案はできても、「最終判断と責任を負う」のは人間であり、この構造は今後も変わりません

2. 経理は「企業全体を横断的に見る目」を持つ存在

経理ほど、企業全体の動き(売上、コスト、在庫、資金繰りなど)を数字で把握できる職種は他にありません

この「企業の血流=お金の流れ」を一手に把握できる強みがあるため、経理職出身者は以下のような上位職にステップアップしやすい傾向があります

・経営企画・CFO候補
・事業部の財務担当
・管理職や部門長
・経営者の参謀としてのポジション

つまり、経理は「プレイヤーとしての仕事」が将来消えても、「経営に近い意思決定を支える存在」として価値を持ち続けます

3. 内部統制・ガバナンス・監査対応は“人の領域”

企業が成長すればするほど、以下のような統制・監査業務の重要性が高まります

・内部統制(業務フローの正当性確認)
・J-SOX対応(上場企業の場合)
・内部監査・外部監査対応
・不正防止・内部通報制度の運用

これらは、単なる数字の整合性確認ではなく「現場の運用実態を見て、適切なチェック体制を整える」業務であり、現場との調整力やヒューマンスキルが極めて重要です。

AIは帳簿上の異常値を検出することはできますが、「その背景にどんな問題があるのか」「誰とどう対話して改善すべきか」を考えることはできません。

AI時代に必要とされる経理スキルとは?

1. 【会計の思考力】―「なぜそうなったか」を考える力

経理の本質は「数字の処理」ではなく、「数字の意味を読み解き、次のアクションに繋げること」です。

必要なスキル

分析力:月次推移や前年比などを見て異常値に気づける
仮説思考:「売上減少=需要低下?競合影響?広告費減?」など因果を掘り下げる力
改善提案力:数値分析をもとに「何を変えるべきか」を提言できる

こうした“考える経理”は、AIでは代替できません。経営者や事業部との対話に耐えうる“会計の解釈力”こそが武器になります。

2. 【デジタルリテラシー】―ITと会計をつなぐ橋渡し力

今や「会計がわかるだけ」では通用しません。クラウド、AI、RPA、BIツールなど、経理業務を支えるIT環境への理解と活用力が求められています

求められるITスキル:

スキル領域
クラウド会計 freee、マネーフォワード、弥生オンラインなどの導入・運用
RPA Power Automate、UiPathなどで定型業務を自動化
BIツール Power BI、Tableauを用いたダッシュボード作成
データ処理 Excel関数・ピボットに加えて、SQL・Pythonでの抽出・加工(上級者)

「システム担当に任せる」時代は終わり、経理がテクノロジーのユーザーかつ設計者になることが重要です


3. 【コミュニケーション力】―数字を“伝える”力

「数字を出す」はAIでもできる。「数字の意味を伝え、相手を動かす」は人間にしかできません

こんな場面で必要:

・経営層への決算報告プレゼン
・事業部への予算説明や支出抑制の交渉
・会計処理に関する監査法人・税理士とのやりとり

特に、経理が「企業の意思決定に影響を与える存在」となるためには、“翻訳者”としての役割(=会計とビジネスの橋渡し)が不可欠です。

経理職のキャリア戦略

AI時代、経理職が“淘汰される人”になるか、“必要とされる人”になるかは、スキルだけでなくキャリアの設計の仕方によっても大きく分かれます
ここでは、実務レベルから中長期視点までの戦略をステップで解説します。

ステップ①:「定型作業からの脱却」を意識する

まず最初にすべきは、“日々のルーティン業務をどう減らすか”を考えることです。具体的には以下のような視点が必要です。

自動化できる業務は自分で手放す

・Excel関数・マクロで効率化
・RPAツールの活用(Power Automate、UiPathなど)
・会計ソフトの自動連携設定(API連携、OCR活用)

「楽をする」ことに罪悪感を持たず、「手を動かす人」から「仕組みを整える人」へと意識を切り替えることが、最初の一歩です。

ステップ②:「会計の意味を説明できる力」を育てる

仕訳を打てるだけでは、近い将来AIに取って代わられます。
だからこそ大切なのは、「なぜこの数字になるのか」を言語化できる力です。

意識したい能力:

・月次推移の異常を自ら見つけ、原因を仮説立てて説明できる
・経営者や上司に対して、数字の背景をわかりやすく報告できる
・収支から経営課題を読み取り、行動提案ができる

つまり、「会計知識×論理的思考×伝える力」の3点セットを高めることで、「AIでは代替できない経理」へと進化していきます

ステップ③:「デジタルスキル」で市場価値を引き上げる

クラウド・RPA・BIなどのスキルを身につけると、“実務とITの橋渡し役”として重宝されるようになります。これはAI時代の経理にとって、強力な武器です。

学ぶと差がつくツール:

スキル分野 おすすめツール・技術
会計ソフト freee、マネーフォワード、弥生オンライン
RPA Power Automate、UiPath
BIツール Power BI、Tableau
データ加工 Excel(関数・ピボット)、SQL、Python(中上級)

デジタルスキルを習得すれば、「経理DX推進人材」として、社内外でキャリアの選択肢が大きく広がります。

経理職へおすすめの資格については以下の記事をご参照ください。



ステップ④:「周辺分野への越境」で希少価値をつくる

AI時代に経理職として生き残るには、経理という枠にとらわれない柔軟なキャリア形成が重要です。

代表的なキャリアパス:

キャリアパス 内容・役割 将来性
経営企画 予算立案、KPI設計、事業戦略立案支援
財務 資金繰り、資金調達、金融機関対応
管理会計 原価管理、業績分析、部門別収益構造の最適化
内部統制・監査 J-SOX対応、ガバナンス設計、業務監査
IT・業務改善PM 経理DX・ERP導入・ワークフロー整備
独立・副業 フリー経理、財務アドバイザー、経理講師など ◯~◎

このように、「経理×◯◯」の組み合わせができる人材は、特に中小企業・スタートアップ・外資系・専門職市場で引く手あまたです。

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まとめ

今回は経理の将来性について書かせていただきました。

この記事がお役に立てば幸いです。

執筆 ・ 監修

平川 文菜(ねこころ)

熊本出身。2018年京都大学卒業。在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。