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中小企業新事業進出補助金とは?対象・条件・申請のポイントを徹底解説

公開日:2025/06/02

最終更新日:2025/06/03

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中小企業が新たな市場やビジネス領域へと進出するには、まとまった初期投資とリスクの覚悟が求められます。そんな挑戦を後押しする制度として、2025年度に新たに創設されたのが「中小企業新事業進出補助金」です。本記事では、本補助金の制度概要から申請条件、注意点、成功のコツまでを徹底解説します。

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補助金の目的と制度概要

「中小企業新事業進出補助金」は、既存事業とは異なる新たな市場・高付加価値事業への進出を支援するための補助金です。企業の成長と生産性向上を促し、最終的には賃上げにつなげることを目的としています。

制度の主な特徴

項目 内容
補助率 1/2
補助上限額 最大9,000万円(大幅賃上げ特例時)
補助下限額 750万円
実施期間 交付決定から14か月
第1回締切 2025年7月10日(木)18:00

企業規模に応じて上限額が設定されており、特例を活用すれば最大9,000万円までの補助が受けられます。

対象となる企業と条件

主な補助対象者

・資本金・従業員数が基準以下の中小企業
・企業組合、財団法人、農事組合法人などの法人
・各種組合、リース会社(共同申請)

補助対象外となるケース

・従業員が0名の事業者
・創業1年未満の企業
・他補助金を受給中の企業
・過去に違反歴のある事業再構築補助金採択企業

中小企業の基準(いずれかを満たせば可)

業種 資本金 常勤従業員数
製造業・建設業・運輸業 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業(除くソフトウェア) 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
ソフトウェア・情報処理業 3億円以下 300人以下


補助金申請の6つの基本要件

「中小企業新事業進出補助金」を活用するには、単に「新しいことをやりたい」という意欲だけでは不十分です。補助金の交付を受けるには、制度が定める6つの厳格な要件をすべてクリアする必要があります

1. 新事業進出要件

申請する事業が「既存事業」と明確に異なり、「新事業進出指針」に適合していることが求められます。たとえば、既存顧客向けの新商品ではなく、新市場・新顧客層に向けた事業展開である必要があります。

2. 付加価値額要件

事業によって生み出される付加価値(営業利益、人件費、減価償却費の合計)が、3〜5年の事業計画期間で年平均4%以上成長する見込みであることが求められます。売上だけでなく、利益や生産性の向上も重視されます。

3. 賃上げ要件

賃上げはこの制度の根幹にある目標の一つ。以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

給与支給総額を年平均2.5%以上増加させる
一人あたり給与額を、都道府県別の「地域別賃金基準」以上に増加させる

過度な賃上げ計画は実行困難と見なされる恐れがあるため、現実的な計画が重要です。

4. 事業場内最賃水準要件

すべての事業所で、地域別最低賃金より30円以上高い水準の給与水準を維持する必要があります。最低賃金を下回ると補助金の返還義務が発生します。

5. ワークライフバランス要件

働き方改革の観点から、「一般事業主行動計画」(次世代育成支援対策推進法に基づく)の策定・公表が必要です。GビズID取得と並び、申請前に済ませるべき準備事項の一つです。

6. 金融機関要件

事業資金の一部を金融機関から調達する場合は、事前に金融機関からの事業計画の確認書を取得する必要があります。融資が前提となる場合は、早めの相談と連携が求められます。

要件未達成は補助金返還のリスクも

上記6項目は「任意」ではなくすべて満たす必要がある必須条件です。特に、賃上げ関連の要件は事後的な検証もあり、未達成の場合は補助金の全額返還が求められるケースもあるため注意が必要です。

補助対象となる経費

補助金の申請において、事業計画がどれほど優れていても「補助対象経費」に該当しない支出は原則補助されません。本制度では、「新事業に直接関係し、合理的かつ必要性が明確な経費」が対象となります。

主な補助対象経費(項目別)

経費項目 内容
機械装置・システム構築費 新事業に必要な機械設備や生産ラインの導入、業務効率化のための業務システムなど
建物費 工場・店舗などの建物の新築・改修工事費(※設備投資に密接に関連していること)
運搬費 導入する機械設備等の輸送・設置にかかる費用
技術導入費 技術導入にかかるライセンス費、技術契約、コンサル費用など
知的財産権等関連経費 特許出願・商標登録・調査費など、知財保護にかかる支出
外注費 開発・設計・試作・調査等を外部委託する場合の費用
専門家経費 経営・IT・生産管理等の専門家へのアドバイザリー費用
クラウドサービス利用費 クラウド会計・在庫管理・営業支援等のSaaSサービスの利用料金(事業計画と連動していること)
広告宣伝・販売促進費 新事業立ち上げに伴う広告宣伝、チラシ、WEBサイト制作、展示会出展費等


経費に関する重要な注意点

項目 解説
補助率 原則1/2(例:1,000万円の支出に対して、最大500万円が補助される)
補助下限額 補助対象経費750万円以上で申請可能
交付決定前の発注NG 採択後でも、交付決定通知前に契約・支払い・納品した経費は補助対象外
土地代は対象外 事業用地の購入費用は補助対象にならない
目的外使用禁止 新事業以外(既存事業など)への転用は不可。補助金の返還対象となることも
財産処分制限あり 補助金で購入した設備等は一定期間処分(売却・貸出)できない制限が課される場合がある


よくあるミスとその回避法

ミス 回避策
「交付決定前」に発注してしまった 採択=交付決定ではない。通知が届くまでは発注・契約しない
既存業務と兼用の設備を導入 専ら新事業用として使用する設備のみ対象。用途を明確にしておく
土地購入や家賃まで計上 補助対象経費に該当しないため、見積もり段階で省く


補助対象経費を正しく見積もるコツ

「事業計画書」と整合性のある費目・金額であること
税抜価格で積算する(補助対象は原則税抜)
・外注・専門家経費は相見積書や契約書で根拠を明示する
・見積書やカタログは、経費積算の根拠資料として必ず保管しておく

申請から交付までの流れ

補助金は申請すれば自動的に交付されるものではありません。採択後にも「交付申請」「実施」「報告」などのプロセスが必要です。以下に、流れを段階的に整理します。

① 事前準備

補助金申請には、いくつかの準備が不可欠です。特に以下2点は早めの対応が必要です。

項目 解説
GビズIDプライムの取得 電子申請に必要。取得に1週間以上かかることもあるため早めに対応を
一般事業主行動計画の策定・公表 「ワークライフバランス要件」の達成に必須。厚労省のサイトで公表登録が必要
金融機関との相談 金融機関からの「事業計画確認書」が求められる場合あり。事前に連携しておく

② 応募申請(電子申請)

補助金申請は完全オンラインで実施されます。

内容 解説
提出手段 電子申請システム(Jグランツ等)を使用
提出書類(例) 事業計画書/決算書(直近1期)/行動計画/従業員数証明/金融機関確認書 など
申請期間 第1回公募:2025年6月頃開始 ~ 7月10日18:00締切(厳守)

注意:申請書類の不備・記載漏れは減点対象になり、不採択の原因になります。

③ 審査・採択

提出された申請内容は、外部有識者などによる審査を経て採択の可否が判断されます。

ポイント 審査の主な観点
実現可能性 新事業の遂行体制、資金調達計画、スケジュールの現実性
新規性・市場性 既存事業との差別化、新市場への展開余地
収益性・継続性 補助終了後の自走性、付加価値の向上可能性
賃上げ計画 過大・過少ではないか、地域水準と整合性があるか

④ 交付申請・交付決定

「採択された=すぐ補助金が使える」わけではありません。次に行うのが「交付申請」です。

内容 解説
交付申請 採択後、具体的な支出計画に基づき申請。経費の積算根拠などを精査される
交付決定 国から正式に「この経費は補助対象として認めます」という決定が通知される

交付決定前に契約・支払い・発注した費用は補助対象外となるため注意が必要です。

⑤ 事業実施・実績報告

交付決定後、14か月以内に補助事業を完了させ、報告を行う必要があります。

内容 解説
事業期間 交付決定日から最長14か月間
中間報告/実績報告 進捗状況や経費の実績、賃上げ要件の履行状況を報告
精算払(後払い) 原則として事業完了後に精算・支払い(事前入金は基本なし)

よくある失敗と対策

失敗例 対策
交付決定前の発注 採択後もすぐ発注せず、交付決定通知の確認を
既存事業での設備流用 「新事業専用」の設備に限定する
過度な賃上げ設定 無理のない範囲で計画を立てる
書類の不備や提出遅れ 提出期限と必要書類はチェックリストで管理


成功のカギは「事前準備」と「実現性のある計画」

本補助金では、形式的な整備だけでなく、事業の実現可能性や収益性、賃上げの確実性が重視されます。採択率を高めるためには、以下の点を意識しましょう。

・GビズIDの早期取得と行動計画の策定
・新事業が「既存事業の延長線」になっていないかの確認
・賃上げ目標に無理がないか、財務計画との整合性
・金融機関との事前連携

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まとめ

「中小企業新事業進出補助金」は、挑戦する企業にとって極めて大きな支援です。ただし、要件が厳格であり、未達成の場合には補助金返還義務も生じるため、慎重な計画が必要です。

ビジネスの未来を見据えて、制度を味方に付けましょう。今すぐ準備を始めれば、7月10日の第1回締切にも間に合います。

執筆 ・ 監修

平川 文菜(ねこころ)

熊本出身。2018年京都大学卒業。在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。