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【2025年(令和7年)分最新版】年末調整の税制改正後の注意点と税理士に頼む流れ


公開日:2025/05/30
最終更新日:2025/05/30
INDEX
2025年(令和7年)は、年末調整実務にとって過去10年で最も厄介な年になるかもしれません。
その最大の理由は、同じ年の中で税制が切り替わるという異例の運用。
12月1日から適用される税制改正により、基礎控除や給与所得控除、扶養控除等の要件が一新され、従来の“ルーティン業務”が通用しなくなります。
「前年と同じやり方で進めたら対応ミス」そんな事態を避けるためには、制度変更の全体像と実務影響を正確に把握することが不可欠です。
本記事では、令和7年分年末調整における制度変更のポイントと実務への影響を整理した上で、
税理士がクライアント対応を行う際に押さえておきたい実務フロー・チェックリスト・費用感まで網羅的に解説します。
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年末調整とは?基本的な概要と重要性
年末調整の概要
年末調整とは、会社などが給与を支払う従業員に代わって、1年間の所得税を正しく計算し、過不足を精算する手続きのことです。原則として、会社は毎月の給与から所得税を「概算」で源泉徴収していますが、その合計額は実際に払うべき税額とは一致しないことが多いため、年末に「本当の金額」に調整する必要があります。
言い換えると、「会社が代わりにやってくれる確定申告の一部」ともいえる制度です。
なぜ年末調整が重要なのか?
以下の理由から、年末調整は非常に重要な役割を果たします。
正確な税額計算
・扶養控除や保険料控除などを反映して、所得税を過不足なく計算。
・払いすぎた場合は還付、足りなければ追徴が行われる。
従業員の手間を省く
・一般の会社員が確定申告をしなくてもよいように、事務負担を軽減。
企業の社会的責任
・適切な税務処理は、企業の信頼性やコンプライアンスにも直結。
年末調整が必要な人・不要な人
区分 | 年末調整が必要か | 備考 |
一般的な会社員 | 必要 | 年間を通じて勤務する場合 |
年の途中で退職した人 | 原則不要 | 一部例外あり(年内に再就職せず給与が1か所のみなど) |
副業のみの人 | 不要 | 自分で確定申告が必要 |
フリーランス・個人事業主 | 不要 | 確定申告が必須 |
年末調整で使われる主な控除
控除の種類 | 内容の例 |
基礎控除 | 所得金額に応じて自動的に適用される控除(2025年から金額改正) |
配偶者控除 | 所得が一定以下の配偶者を扶養している場合に適用 |
扶養控除 | 子や親などを扶養している場合に適用 |
社会保険料控除 | 健康保険や年金など、支払った社会保険料を控除 |
生命保険料控除 | 生命保険や介護医療保険などに支払った保険料を控除 |
税理士に依頼すべきケース
会社側が以下のような状況に該当する場合、税理士のサポートが特に有効です。
・改正内容が多く、年末調整手続きに不安がある
・従業員数が多く、業務負担が大きい
・パート・アルバイトなど雇用形態が多様で、控除判断が難しい
・副業や兼業をしている社員が増えてきた
・税制改正への対応が遅れがちで、チェック体制に自信がない
2025年(令和7年)分の重要なポイント
令和7年分(2025年分)の年末調整について、最新の税制改正情報をもとに詳しくご説明いたします。
施行時期の特殊性
令和7年分の年末調整は非常に特殊な年となります
・令和7年12月1日施行:税制改正の適用開始
・令和7年11月まで:従来の制度で源泉徴収
・令和7年12月以降:新制度で年末調整等を実施
つまり、同じ年内で制度が変わるため、年末調整時に大幅な調整が必要になります。
令和7年分年末調整での主要変更点
1. 基礎控除の大幅拡充
令和7年分より基礎控除が大幅に拡充します。
合計所得金額に応じた基礎控除額(令和7年分適用):
合計所得金額 | 基礎控除額 | 改正前 |
132万円以下 | 95万円 | 48万円 |
132万円超〜336万円以下 | 88万円 | 48万円 |
336万円超〜489万円以下 | 68万円 | 48万円 |
489万円超〜655万円以下 | 63万円 | 48万円 |
655万円超〜2,350万円以下 | 58万円 | 48万円 |
2. 給与所得控除の引き上げ
また、給与取得控除も引き上げられます。
・最低保障額:55万円 → 65万円
・実質的な影響:「103万円の壁」が「123万円の壁」に変更
3. 特定親族特別控除の新設
新たに創設される控除制度としては、以下があげられます。
・対象者:19歳以上23歳未満の親族
・所得要件:合計所得金額58万円超123万円以下
・控除額:最高63万円(親族の所得により変動)
・必要書類:「給与所得者の特定親族特別控除申告書」
4. 扶養親族等の所得要件改正
拡大される所得要件としては、以下があげられます。
・扶養親族・同一生計配偶者:48万円以下 → 58万円以下
・ひとり親の子:48万円以下 → 58万円以下
・勤労学生:75万円以下 → 85万円以下
【令和7年分年末調整の具体的注意点】
従業員への確認事項(必須チェック)
1.新たに扶養対象となった親族の確認
- 所得要件の緩和により新たに対象となる可能性
- 該当者には「扶養控除等(異動)申告書」の再提出を依頼
2.特定親族特別控除の適用希望者
- 19歳以上23歳未満の親族がいるか
- 親族の所得が58万円超123万円以下かを確認
3.年収の再確認
- パート・アルバイトの年収状況を確認
- 123万円以下で調整希望があるか確認
新しい申告書の取り扱い(令和7年分)
申告書名(4様式兼用)は以下の通りです。
・令和7年分給与所得者の基礎控除申告書
・給与所得者の配偶者控除等申告書
・給与所得者の特定親族特別控除申告書
・所得金額調整控除申告書
主な変更点は以下の通りです。
・複数様式が一体化した兼用様式
・特定親族特別控除の記載欄が追加
・公開予定:令和7年6月末ごろ
年末調整計算での注意点
令和7年分の年末調整での注意点は以下の通りです。
1.改正後の控除額適用
- 所得区分に応じた基礎控除額の適用
- 給与所得控除額の変更を反映
2.特定親族特別控除の計算
- 親族1人あたり最大63万円
- 所得により控除額が変動
3.扶養控除の再計算
- 所得要件変更により扶養対象が拡大
実務上の対応スケジュール
■ 準備期間(令和7年6月〜11月)
1.6月末:新様式の申告書公開(国税庁)
2.8月末:年末調整事務の詳細情報公開
3.9月〜10月:従業員への説明・書類配布
4.11月:申告書の回収・確認
■ 年末調整実施期間(令和7年12月〜令和8年1月)
1.12月:新制度での年末調整を実施
2.1月:源泉徴収票交付・法定調書提出
特に注意すべき実務ポイント
■ システム対応
・給与計算システムの控除額更新
・年末調整ソフトの改正対応版導入確認
■ 従業員対応
・制度改正の内容をわかりやすく周知
・申告書の書き方を説明しサポート
・問い合わせへの事前準備
■ 計算ミス防止
・二重チェック体制の導入
・合計所得区分ごとの控除額確認
・特定親族特別控除の適用漏れ防止
最新情報の入手先
国税庁による情報提供予定:
・令和7年8月末以降:詳細事務内容公開
・令和7年5月末ごろ:FAQ公開予定
・令和7年6月末ごろ:新申告様式公開予定
参考リンク:国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
税理士に年末調整を依頼する場合の具体的な手順
1. 税理士の選び方
年末調整業務は毎年行う定型業務ですが、近年の税制改正により複雑化しています。そのため、対応が丁寧かつ的確な税理士の選定が重要です。
✅ 選定時のチェックポイント
チェック項目 | 内容 |
年末調整の実績 | 過去にどれだけ年末調整を受託しているか。企業規模への対応実績も確認。 |
コミュニケーション力 | 専門用語ばかりで説明されると現場が混乱します。説明のわかりやすさも大切。 |
料金体系の明確さ | 曖昧な料金設定や、追加費用の有無を事前に確認。パート・アルバイト人数による変動も。 |
ITツールへの対応力 | 勤怠・給与ソフトやクラウドストレージとの連携対応の有無。電子申告・電子データに強いか。 |
税制改正への対応力 | 2025年(令和7年)改正など、最新制度への理解と対応力があるかどうか。 |
補足:
インボイス制度や社会保険適用拡大など周辺制度にも詳しい税理士を選ぶと、長期的にも安心です。
2. 依頼する時期と流れ
年末調整は年末に一気に集中する業務です。依頼が遅れると、希望日に対応してもらえなかったり、処理が雑になる恐れもあるため、早めの準備がカギです。
依頼時期の目安
タスク | 時期 | 補足 |
税理士探し・打診 | 10月上旬まで | 遅くとも11月初旬には依頼確定を |
必要書類の社内回収 | 10月中旬〜11月上旬 | 従業員から保険料控除申告書などを集める |
書類の提出・データ送付 | 11月中旬〜下旬 | Excel、クラウド、紙など形式を確認 |
年末調整実務 | 12月上旬〜中旬 | 給与支払日の前には完了が望ましい |
源泉徴収票の交付 | 翌年1月末まで | 法定調書の提出もセットで行うことが多い |
依頼の流れ(簡易フロー)
1.税理士との契約締結
◦見積り確認・業務範囲の明確化
2.従業員データの提供
◦扶養控除等申告書、保険料控除申告書などを集めて渡す
3.給与情報の共有
◦年間給与データ・賞与・源泉徴収済額など
4.税理士による年末調整の実施
◦控除額計算、還付・徴収額計算、帳票作成
5.帳票の納品と説明
◦源泉徴収票、年末調整結果一覧、法定調書合計表など
6.翌年の準備・改善提案(必要に応じて)
年末調整の流れ:税理士に依頼する場合
年末調整を税理士に依頼する場合でも、企業側には一定の準備と情報提供の責任があります。以下では、税理士に依頼する際の一般的な流れを3ステップで解説します。
1. 必要な書類の準備
まずは、年末調整に必要な従業員ごとの書類と会社側の情報を整理します。
従業員から回収すべき書類(通常は10月〜11月上旬に回収)
書類名 | 内容・注意点 |
扶養控除等申告書 | 配偶者や扶養家族の有無・年齢などを記載 |
保険料控除申告書 | 生命保険料・地震保険料などの証明書を添付 |
基礎控除申告書(令和2年以降必須) | 所得に応じた控除額を判定するために必要 |
配偶者控除等申告書 | 年収に応じて配偶者控除の可否を判断 |
会社側で用意すべき情報
・年間の給与支払額(賞与含む)
・各月の源泉徴収税額
・社会保険料控除額(会社経由で支払った分)
・雇用形態別の従業員リスト
2. 所得と控除の確認
集めた書類と給与データをもとに、税理士が正確な課税所得・控除額を計算できるように整理します。
チェックポイント
・控除証明書がすべて揃っているか(特に郵送で届く保険料控除証明)
・扶養親族の年齢・所得要件を満たしているか
・副業がある場合は、本人から別途申告が必要
補足:2025年(令和7年)からは、基礎控除の控除額が「合計所得金額」に応じて段階的に変動するため、収入の見積り精度がより重要になります。
3. 税理士との相談と契約
書類が揃ったら、税理士と最終確認・契約締結を行います。
✅ 契約までのステップ
1.見積もりの提示
◦対象人数・業務範囲・納品物(源泉徴収票、帳票など)を明確化
2.契約書の締結
◦顧問契約 or スポット契約かを明確にする
3.スケジュールの調整
◦データの提出期限・納品予定日を事前に調整
4.業務開始
◦書類チェック・控除判定・税額計算に着手
スポット契約の場合の注意点
項目 | 内容 |
契約時期 | 10月〜11月中に行わないと、繁忙期で受託不可になる場合あり |
データ納期 | 期限遅れがあると、年末の給与計算に間に合わない |
納品物 | 源泉徴収票/法定調書合計表/納付書などが基本 |
必要書類の準備を早めに行うことで、税理士との連携もスムーズになり、ミスや遅延を防ぐことができます。
税理士に依頼する際の費用と相場
年末調整を税理士に依頼する際の費用は、従業員数・作業範囲・契約形態(顧問 or スポット)によって異なります。
1. 一般的な料金体系
項目 | 相場(税込) | 補足 |
基本料金 | 2万〜5万円 | 従業員5名以下など小規模企業向け |
従業員追加(1名ごと) | 1,000〜2,000円 | パート・アルバイト含めた実人数が基準 |
源泉徴収票の作成 | 上記に含まれる or 1枚数百円程度 | スポット契約時は追加料金あり |
法定調書合計表の作成 | 5,000〜1万円 | 提出も含めると追加料金あり |
支払調書の作成 | 1枚1,000円〜 | 外注・報酬の支払がある場合のみ必要 |
電子申告対応 | 無料〜1万円 | 電子対応の有無で価格差あり |
2. 顧問契約とスポット契約の違い
✅ 顧問契約の場合(通年契約)
・年末調整費用がパッケージに含まれることが多い
・月額顧問料に応じて無料 or 割引になるケースあり
・経理・労務データを共有しているため、対応がスムーズ
✅ スポット契約の場合(年末調整のみ依頼)
・単発の請負契約となるため1回ごとの見積もりが必要
・書類の形式や提出方法に制約がある場合も
・他業務との兼ね合いで繁忙期は断られるリスクあり
3. コストを抑えるポイント
・Excelやクラウド形式でデータを整理して提出する
・書類を一括・期限内に提出して、やり取りの手間を減らす
・外注先や支払調書対象者が多い場合は、事前にリストアップ
4. 価格と品質のバランス
ケース | 費用重視 | 品質重視 |
小規模企業(5名以下) | 低コストのスポット契約 | 小回りが効く税理士事務所 |
中規模以上(10名超) | 毎年同じ税理士に依頼 | 顧問契約で連携体制を構築 |
IT企業・副業社員多め | 電子申告や法改正への対応があるか確認 | 最新制度への理解があるか重視 |
働きがいのある会計事務所特選

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まとめ
この記事では令和5年度分の年末調整について解説させていただきました。
この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

平川 文菜(ねこころ)