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青色申告特別控除の仕組みとは?10万円・55万円・65万円の違いと適用条件


公開日:2025/08/07
最終更新日:2025/08/07
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個人事業主やフリーランスとして事業を営む方にとって、節税の鍵となるのが「青色申告特別控除」です。
この制度を正しく理解し、要件を満たせば最大65万円の所得控除が受けられます。
しかし、「10万円控除と55万円控除、どう違うの?」「65万円控除って誰でも受けられるの?」といった疑問を持つ方も少なくありません。
この記事では、青色申告特別控除の仕組みと3つの控除額の違い、適用条件をわかりやすく解説します。
これから青色申告を始めようと考えている方はもちろん、すでに申告経験がある方も、正しい知識で損をしない確定申告を目指しましょう。
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1. 青色申告特別控除とは?
青色申告とは、個人事業主や不動産所得がある方が一定の帳簿を備えた上で行う確定申告制度です。
青色申告を選択すると、税務署に申請して承認を受けた上で、以下のようなさまざまな優遇措置を受けることができます。
中でも代表的なのが、「青色申告特別控除」です。
これは、一定の条件を満たすことで、所得から10万円・55万円・65万円のいずれかを控除できる制度であり、所得税と住民税の軽減につながります。
2. 控除額の種類と違い:10万円・55万円・65万円
青色申告特別控除には以下の3つの控除額があり、それぞれに適用条件があります。
控除額 | 主な適用条件 | メリット |
10万円 | 簡易帳簿など最低限の帳簿 | 最もハードルが低いが、控除額も小さい |
55万円 | 複式簿記による記帳+申告書提出 | 節税効果が高い。帳簿がしっかりしていれば狙える |
65万円 | 上記に加え、e-Tax提出または電子帳簿保存制度に対応 | 最大控除。手間はかかるが、節税効果は絶大 |
■10万円控除の概要
簡易簿記や収支内訳書など、最低限の帳簿付けをしていれば適用可能で、複式簿記を使わない場合や、開業初年度で簡易な申告を行うケースでよく使われます。
小規模な副業や不動産収入がある人にも適しています。
■55万円控除の概要
複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を含む申告書を提出していることが条件です。
所得がある程度あり、節税対策を意識している個人事業主にとって現実的な選択肢となっています。
■65万円控除の概要
55万円控除の条件に加えて、以下のいずれかを満たす必要があります。
デジタルに強いフリーランスやIT系事業者では、積極的に活用されています。
◦e-Taxで確定申告をする
◦電子帳簿保存制度の承認を得て電子的に帳簿保存を行う
3. 控除額ごとの適用条件まとめ
以下は各控除額ごとの適用要件の詳細をまとめた表です。
控除額 | 適用条件 | 注意点 |
10万円 | - 青色申告の承認を得ている - 単式簿記でもOK |
控除額が最も少ない |
55万円 | - 青色申告の承認を得ている - 複式簿記による記帳 - 損益計算書・貸借対照表の添付 |
e-Tax未利用ならここまで |
65万円 | - 上記55万円の条件を全て満たす - e-Taxによる提出または電子帳簿保存制度に準拠 |
電子帳簿保存制度は事前申請が必要 |
4. 実際にいくら節税できる?簡単シミュレーション
青色申告特別控除による節税効果を、ざっくりとした例で見ていきます。
節税金額
ケース①:年間所得100万円の場合控除タイプ | 白色申告 | 青色10万円 | 青色55万円 | 青色65万円 |
所得税+住民税 | 40,700円 | 25,600円 | 0円 | 0円 |
節税額 | - | 15,100円 | 40,700円 | 40,700円 |
ケース②:年間所得300万円の場合
控除タイプ | 白色申告 | 青色10万円 | 青色55万円 | 青色65万円 |
所得税+住民税 | 316,100円 | 297,500円 | 229,500円 | 214,400円 |
節税額 | - | 18,600円 | 86,600円 | 101,700円 |
ケース③:年間所得500万円の場合
控除タイプ | 白色申告 | 青色10万円 | 青色55万円 | 青色65万円 |
所得税+住民税 | 733,000円 | 702,600円 | 568,800円 | 548,600円 |
節税額 | - | 30,400円 | 164,200円 | 184,400円 |
重要なポイント
1. 所得が高いほど節税効果が大きい
所得500万円の場合、青色申告特別控除65万円の適用により、年間約18万4千円もの節税が可能です。
2. 対象となる税金・保険料
青色申告特別控除が節税効果をもたらすのは
・所得税(復興特別所得税含む)
・住民税(森林環境税含む)
・国民健康保険料
※個人事業税や国民年金保険料には影響しません
3. 追加の節税メリット
青色申告には特別控除以外にも:
・青色事業専従者給与の必要経費算入
・純損失の3年間繰越控除
・少額減価償却資産の特例(30万円未満)
・貸倒引当金の設定
などの特典があります。
5. 青色申告特別控除を受けるための流れ
青色申告特別控除を受けるためには、適切な手続きと準備が必要です。控除額別に詳しい流れをご説明いたします。
STEP 1:事前準備
必要な申請書の提出
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
・提出期限:開業から1か月以内
・提出先:納税地の所轄税務署
青色申告承認申請書
・提出期限:
◦既に事業を行っている場合:青色申告したい年の3月15日まで
◦1月16日以降に新規開業:開業から2か月以内
・提出先:納税地の所轄税務署
・重要:期限を過ぎると、その年の青色申告は不可
STEP 2:帳簿付けの準備(控除額別)
10万円控除の場合
・記帳方法:簡易簿記(単式簿記)でOK
・必要帳簿:
◦現金出納帳
◦売掛帳・買掛帳
◦経費帳
◦固定資産台帳
・決算書:損益計算書のみ
55万円控除の場合
・記帳方法:複式簿記
・必要帳簿:
◦仕訳帳
◦総勘定元帳
◦現金出納帳
◦売掛帳・買掛帳
◦経費帳
◦固定資産台帳
・決算書:貸借対照表+損益計算書
65万円控除の場合
・記帳方法:複式簿記
・必要帳簿:55万円控除と同じ
・決算書:貸借対照表+損益計算書
・追加要件:以下のいずれか
◦e-Tax(電子申告)での確定申告
◦優良な電子帳簿保存の実施
STEP 3:帳簿付けの実践
おすすめ会計ソフト
クラウド型(おすすめ)
・やよいの青色申告オンライン:初心者向け、サポート充実
・freee会計:自動化機能が豊富
・マネーフォワード クラウド確定申告:直感的操作
インストール型
・やよいの青色申告:従来型の定番ソフト
・みんなの青色申告:低価格で機能充実
会計ソフト利用のメリット
・簿記知識がなくても複式簿記が可能
・自動計算・自動仕訳で入力が簡単
・決算書・申告書の自動作成
・e-Tax連携で65万円控除に対応
STEP 4:年間の流れ
日常業務(随時)
・取引の記録:レシート・領収書の保管と入力
・帳簿の更新:売上・経費の記帳
・資料整理:請求書・契約書等の整理
年末(12月)
・在庫の棚卸し
・減価償却費の計算
・未払い・前払い費用の整理
年明け(1月〜3月15日)
・決算書の作成:貸借対照表・損益計算書
・確定申告書の作成
・申告・納税:3月15日まで
STEP 5:65万円控除のための電子申告
e-Tax利用の準備
1.マイナンバーカードの取得
2.ICカードリーダー または マイナンバーカード対応スマホの準備
3.e-Taxソフト(WEB版)のアカウント作成
4.会計ソフトのe-Tax連携設定
電子申告の手順
1.会計ソフトで申告書作成
2.e-Tax形式でデータ出力
3.e-Taxで送信
4.受信通知の確認
よくある注意点とトラブル対策
申請書提出の注意点
・期限厳守:青色申告承認申請書の期限は絶対
・提出先確認:納税地の所轄税務署を間違えないよう注意
・承認通知:通常は自動承認(12月31日まで通知がなければ承認)
帳簿付けの注意点
・継続性:一度始めたら継続的な記帳が必要
・保存義務:帳簿や領収書は7年間保存
・複式簿記:55万円・65万円控除は必須
よくあるトラブル
・申請忘れ:開業2年目の申請期限切れに注意
・記帳漏れ:日々の記帳を怠ると年度末に困難
・電子申告失敗:事前準備とテスト送信を推奨
6. よくある質問(FAQ)
Q:申請書の提出期限を過ぎてしまいました。どうすればよいですか?
A: 残念ながら、その年の青色申告は適用できません。白色申告での確定申告となります。ただし、翌年以降は再度申請可能です。遡及適用はできませんのでご注意ください。Q. サラリーマンの副業でも青色申告特別控除は使えますか?
A: 使えますが、条件があります:・副業の所得が事業所得として認められること
・副業の所得が20万円を超える場合(確定申告が必要)
・継続性・独立性がある事業であること
メリット: 給与所得控除と青色申告特別控除の両方を併用できます。
Q. 簿記の知識がないのですが、青色申告はできますか?
A: できます。 会計ソフトを使用すれば、簿記の知識がなくても複式簿記による帳簿付けが可能です。おすすめ会計ソフト:
・やよいの青色申告オンライン(初心者向け)
・freee会計(自動化機能豊富)
・マネーフォワード クラウド確定申告
Q.65万円控除と55万円控除の違いは何ですか?
A: 主な違いは電子申告の有無です:控除額 | 追加要件 | |
55万円 | 複式簿記 | 貸借対照表・損益計算書の提出 |
65万円 | 55万円の要件 | e-Tax電子申告 または 電子帳簿保存 |
65万円控除は年間約1万円の追加節税効果があるため、ぜひ電子申告をおすすめします。
Q. 事業が赤字の場合も青色申告はできますか?
A: できます。むしろ青色申告の方がメリットが大きいです:青色申告のメリット:
・損失繰越:赤字を3年間繰り越して、翌年以降の黒字と相殺可能
・損益通算:事業の赤字を他の所得(給与所得など)と相殺可能
白色申告の場合:
・基本的に損失繰越は不可
・その年で赤字が切り捨てられる
Q. 青色申告特別控除額が0円と表示されるのはなぜですか?
A: 以下の場合に0円となります:・事業所得が赤字の場合
・所得金額が控除額を下回る場合
例:所得が30万円の場合、65万円控除は30万円分のみ適用され、残り35万円分は使用できません。
Q. 青色申告をやめたい場合はどうすればよいですか?
A: 「青色申告の取りやめ届出書」を提出します:・提出期限:やめたい年の翌年3月15日まで
・提出先:納税地の所轄税務署
Q. 青色申告が取り消されることはありますか?
A: 以下の場合に取り消される可能性があります:・2期連続での期限後申告
・帳簿の不備や記帳義務違反
・税務調査での重大な不正
取り消された場合、過去に遡って適用が無効になる場合があります。
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7. まとめ
確定申告は「ただ提出する」だけでなく、「どう提出するか」で節税額が大きく変わります。
ぜひ本記事を参考に、自分に合った方法で青色申告特別控除を活用し、賢く節税してください。

平川 文菜(ねこころ)