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【保存版】経理のスキルアップに必要な知識・資格・実務とは?


公開日:2025/06/26
最終更新日:2025/06/26
INDEX
経理職は、かつて「記帳業務」が主な役割とされていました。しかし近年、経理の役割は経営戦略に深く関与する「戦略的ポジション」へと変化しています。本記事では、そんな経理職に求められる知識や資格、実務スキルの習得方法、さらにはキャリアパスまでを網羅的に解説します。スキルアップに本気で取り組みたい方は、ぜひ保存版としてお役立てください。
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経理スキルアップの重要性
近年の経理業務は、以下のような変化に直面しています。
・会計の自動化・効率化:クラウド会計やRPAの導入により、単純作業が自動化。
・国際対応力の重要性:グローバル企業ではIFRS(国際会計基準)への理解が不可欠に。
・経営視点の要求:財務データを読み解き、戦略的提言ができる力が求められるように。
このような変化を背景に、経理は単なる作業者から「経営判断を支える専門職」へと進化しています。スキルアップにより年収の向上やキャリアの選択肢も大きく広がるのです。
スキルアップに欠かせない基礎知識
1. 簿記の基本
・仕訳や勘定科目の理解
・試算表・精算表の作成と検証
・損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書の読み方
2. 会計・税務知識
・企業会計原則、会社法の基本
・法人税・消費税の基礎
・IFRSの基本的な構造と意義
3. ITリテラシー
・Excel(関数、ピボットテーブル、VBA)
・会計ソフト(弥生会計、勘定奉行など)
・BIツール・RPAツールの基本操作
キャリアに直結する資格取得
経理職におけるスキルアップやキャリア形成において、「資格取得」は極めて有効な手段です。特に、以下の5つの資格は実務での即戦力化、昇進・転職・年収アップに直結しやすい資格として注目されています。
① 日商簿記検定(3級・2級・1級)
■ 概要
日本商工会議所が実施する、国内で最も知名度が高い会計系資格。
■ レベル別の内容
級 | 内容 | 対象者 | 主な活用シーン |
---|---|---|---|
1級 | 管理会計・原価計算・会計基準など | 上級者・専門職 | 上場企業の経理、経理マネージャー候補 |
2級 | 商業簿記+工業簿記の実務力 | 経理実務者 | 月次決算、財務書類の作成 |
3級 | 商業簿記の基礎(仕訳・試算表など) | 経理初心者 | 経理職への入門、事務職 |
■ メリット
・実務と直結しているため、即戦力としてアピール可能
・資格手当の対象となる企業も多数
・キャリア初期~中盤における基本スキルの証明となる
② 税理士
■ 概要
法人税・所得税・相続税等に関する高度な専門資格。税務代理が可能。
■ 試験内容
5科目合格制(簿記論・財務諸表論+税法3科目)。働きながら複数年かけて取得する人も多い。
■ メリット
・企業内税務のプロフェッショナルとしての地位を確立できる
・経理部門で税務戦略や節税提案などの中核を担える
・将来的に独立開業の選択肢も広がる
■ 適したキャリア段階
・経理実務経験3~5年以上
・マネージャー候補としてのスキルアップ
・管理職を目指す30代の中堅層
③ 公認会計士(CPA)
■ 概要
日本の財務・監査系資格の最高峰。監査証明業務を独占的に担える唯一の資格。
■ 主な業務領域
・会計監査
・IPO支援
・経営コンサルティング
・M&Aの財務デューデリジェンスなど
■ メリット
・ビッグ4監査法人や上場企業経理部門への道が開ける
・高年収・高評価ポジションを狙える
・CFOや経営企画、経営者補佐としての道も
■ 適したキャリア段階
・若手で専門職を志向する人(20~30代)
・管理職・CFOレベルのポジションを目指す人
・海外やM&A領域に関心がある人
④ USCPA(米国公認会計士)
■ 概要
米国会計士の資格。IFRSや米国基準(US-GAAP)にも対応。
■ 特徴
・試験は英語で実施
・日本国内でも取得可能
・会計+英語力の証明として強力
■ メリット
・外資系企業・海外子会社との連携に強くなる
・グローバル経理人材として市場価値が高まる
・海外赴任・駐在候補としてのチャンスが広がる
■ 適したキャリア段階
・グローバル志向のある20~40代
・外資系・上場企業志望の経理担当者
・英語力を活かしたキャリアアップを目指す人
⑤ FASS検定(経済産業省後援)
■ 概要
財務会計スキルのレベルを可視化できる民間試験。
■ 対象範囲
・会計
・資金
・税務
・経営分析
■ メリット
・社内評価や昇進の指標に使われることも
・受験ハードルが低く、スキルの定量化に有効
・上場企業では人材育成に活用されるケースあり
■ 適したキャリア段階
・実務3~5年目の中堅経理
・知識の棚卸・弱点補強をしたい人
キャリアステップ別の必要スキル
経理は「ジュニア」→「シニア」→「マネージャー」→「CFO(最高財務責任者)」へと段階的に役割と責任が高度化していきます。それぞれのフェーズで習得すべきスキルは異なり、適切な学びと経験の積み上げが重要です。
① ジュニア経理(経験1〜3年)
■ 主な役割
・日常の仕訳入力、請求書処理、支払処理などの実務補助
・月次決算補助業務
■ 必要スキル
・日商簿記2級程度の会計知識
・Excelの基本関数(SUM、IF、VLOOKUPなど)
・会計ソフト(例:弥生会計、勘定奉行)の操作
・業務マニュアルの理解と実行力
■ 到達目標
・月次業務を一通りこなせるようになる
・チームメンバーとして指示に従いながら業務を進められる
② シニア経理(経験4〜8年)
■ 主な役割
・月次・四半期・年次決算の主担当
・監査法人対応・税理士対応
・原価計算や予算実績管理への参画
■ 必要スキル
・日商簿記1級または税務知識(法人税・消費税の基礎)
・Excelの応用(ピボット、SUMIFS、マクロなど)
・経理業務全体の流れの理解
・会計ソフトの応用活用(データ抽出・レポート出力)
・チームメンバーへの簡易な指導力
■ 到達目標
・年次決算を自走できる
・決算書を読み、経営層に数字で説明ができる
③ 経理マネージャー(経験8〜15年)
■ 主な役割
・部門の統括、人材育成
・税務申告の責任者
・内部統制の構築・運用
・経営陣へのレポーティング
■ 必要スキル
・マネジメント力(メンバー育成・KPI管理・評価)
・財務分析・経営指標の読み解きと改善提案力
・プロジェクトマネジメント(RPA導入、業務改善など)
・リスクマネジメント・内部統制(J-SOX含む)
■ 到達目標
・チームを率いて月次~年次決算・税務申告まで完遂
・経営会議での報告・提言ができる
・人と数字の両面をマネジメントできる
④ CFO(Chief Financial Officer:経験15年以上)
■ 主な役割
・全社の財務戦略立案と実行
・予算管理、資金調達、M&A対応
・投資家対応(IR)、監査対応
・グローバル拠点の統括など
■ 必要スキル
・公認会計士、USCPA、MBAなどハイレベル資格・知識
・経営戦略・ファイナンスの理解(ROE、資本コスト等)
・英語を含むコミュニケーションスキル(海外子会社対応)
・ファシリテーション能力(取締役会・株主総会対応)
・企業価値最大化に向けた意思決定力
■ 到達目標
・経営の意思決定に財務視点から主導的に関与
・社内外のステークホルダーを動かせる影響力の保持
ステージ | 経験年数 | 求められる主なスキル |
---|---|---|
ジュニア経理 | 1~3年 | 日商簿記2級レベル、月次決算補助、Excel基本操作 |
シニア経理 | 4~8年 | 年次決算、税務知識、内部統制の理解 |
経理マネージャー | 8~15年 | 人材マネジメント、財務分析、税務戦略 |
CFO(最高財務責任者) | 15年以上 | 経営戦略、M&A、リスクマネジメント、英語力 |
スキルアップのための学習計画モデル
以下に、経理職の成長に役立つ「スキルアップのための学習計画モデル」について、期間ごとの目標・具体的なアクション・学習方法・到達成果を体系的に解説します。
1ステージ:3ヶ月(基礎固め)
■ 学習目標
・経理の基本的な構造と業務フローの理解
・会計の基本用語と仕訳が分かる状態に
■ 学ぶ内容
・日商簿記3級レベルの知識
・会計ソフトの基本操作(例:弥生会計)
・Excelの基礎関数(SUM、IF、VLOOKUP)
■ おすすめ学習方法
・市販テキスト・問題集で独学
・YouTubeやUdemy等の無料動画講座
・実務者によるセミナー参加(初学者向け)
■ 成果イメージ
・経理部門に入っても戸惑わない最低限の知識を獲得
・請求書処理や仕訳入力が一人でできるようになる
2ステージ:6ヶ月(実務力の強化)
■ 学習目標
・月次決算の流れを理解し、部分的に担当できる
・会計ソフトとExcelを連携した処理が可能になる
■ 学ぶ内容
・日商簿記2級の知識(商業簿記・工業簿記)
・月次処理や試算表の作成スキル
・ピボットテーブル・SUMIFSなどExcel応用
■ おすすめ学習方法
・簿記2級対応の通信講座(資格の大原、TACなど)
・実務担当者とのOJT、決算補助の実践
・社内・外部研修での業務フロー理解
■ 成果イメージ
・月次決算で帳簿を締める、精算処理ができる
・Excelによるレポート作成や集計業務を自走可能
3ステージ:1年(専門性の習得)
■ 学習目標
・決算書の構造を深く理解し、分析・説明ができる
・経営視点で数字を読み解くスキルを養う
■ 学ぶ内容
・日商簿記1級の管理会計・原価計算
・法人税・消費税などの基礎税務
・FASS検定(財務会計実務スキル)の対策
■ おすすめ学習方法
・資格予備校の長期講座
・eラーニングによる通勤・すきま時間活用
・財務諸表分析の実務書・ケーススタディ
■ 成果イメージ
・経理チーム内で決算のリーダー格になる
・経営層向けの報告資料や分析メモを作成できる
4ステージ:3年(上級資格&マネジメント)
■ 学習目標
・税理士・USCPAなどの高度資格を取得
・経営戦略・財務戦略を数字で支える立場へ
■ 学ぶ内容
・税理士試験科目(法人税、財務諸表論など)
・USCPA(国際会計基準・英語会計)
・財務分析、資金調達、M&Aの基礎
■ おすすめ学習方法
・長期計画に基づいた資格予備校通学 or オンラインスクール
・海外向け決算・開示資料の作成実務への参画
・ビジネス英語の習得(TOEIC、英文会計書の読解)
■ 成果イメージ
・税務戦略の提案や内部統制構築をリードできる
・海外案件や上場準備など高難度業務に関与
・管理職・CFO候補として組織を動かす役割に進化
期間 | 学習内容 | 成果目標 |
---|---|---|
3ヶ月 | 簿記3級、会計ソフト基礎操作 | 経理基礎力の定着 |
6ヶ月 | 簿記2級、Excel応用、月次処理実践 | 日常業務での即戦力化 |
1年 | 簿記1級または税理士科目合格 | 専門性の確立 |
3年 | 税理士またはUSCPA取得 | キャリアの飛躍と年収増加 |
働きがいのある会計事務所特選

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まとめ
経理は、ルーチン作業から「経営の舵取り役」へと進化しています。そのために必要なのは、知識と資格だけではありません。自ら学び続け、実務で成果を出し、組織に新たな価値を提供すること。それこそが、これからの経理パーソンに求められるスキルアップの本質です。
この記事がお役に立てば幸いです。

平川 文菜(ねこころ)