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創業支援で選ばれる税理士になるには?創業支援で差がつく補助金・融資サポート術

公開日:2025/06/06

最終更新日:2025/06/06

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中小企業庁の統計によれば、年間で約150万社が新設され、創業融資市場は2.8兆円規模に達しています。このダイナミックな市場において、創業者の78%が「税理士の支援を望んでいる」と回答していました。一方で、実際に認定経営革新等支援機関として活動している税理士は全体の12%に過ぎません。

つまり、税理士にとって創業支援は「大きな需要があるにもかかわらず、まだ競合が少ないブルーオーシャン」であるのです。この記事では、創業支援で選ばれる税理士になるための戦略・ノウハウ・実務ポイントを解説します。

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創業支援市場の現状と税理士の課題

創業支援は、今後の税理士業務の差別化・高付加価値化を目指す上で注目されている分野です。

市場データ

項目 数値・内容
年間新設法人 約150万社
創業融資市場規模 約2.8兆円
創業者の税理士支援希望率 約78%
認定支援機関となっている税理士の割合 約12%

このように、創業者の約8割が税理士のサポートを望んでいるにもかかわらず、実際に支援体制を整えている税理士は非常に少ないのが現状です。これは、創業支援に関する「潜在的なニーズ」と「供給のミスマッチ」が存在していることを意味しています

創業者が税理士に求めるスキル・経験

創業者が税理士選定時に重視するポイントは以下のとおりです。

税理士選定の基準 割合
創業融資のサポート経験 85%
補助金申請のノウハウ 72%
業界知識や理解度 68%
料金の透明性 61%
レスポンスの早さ 54%

このデータから、税務以外の実務的支援(融資・補助金)へのニーズが特に高いことが読み取れます。

税理士が抱える主な課題

創業支援分野に参入しきれていない背景には、以下のような具体的な課題があります。

① 創業支援経験の不足

多くの税理士は、顧問業務や申告業務をメインにしており、創業初期特有の業務(融資相談、事業計画、会社設立支援など)に不慣れです。そのため、対応力に不安があり、積極的に売り出すことができないという現実があります。

② 補助金・融資制度の知識不足

制度は多岐にわたり、頻繁に条件や要件が更新されるため、常に最新情報をキャッチアップしていないと提案の質が落ちてしまいます。これが支援のハードルを上げる要因の一つです。

③ 差別化ポイントの不明確さ

税理士の差別化は「価格」ではなく「提供価値(サービス内容)」で行うべきですが、創業支援における具体的な強みや打ち出し方を言語化できていないケースが多く見られます。

④ 営業・マーケティング力の不足

いざ支援できる体制があっても、「どうやって創業者と接点を持つか」が課題となります。SNSやSEO、紹介ネットワークなどデジタル時代の集客手法への理解と実践が不足している税理士も少なくありません。

認定経営革新等支援機関の取得が鍵

認定経営革新等支援機関とは?

中小企業庁が認定する、経営支援の専門家です。税理士・公認会計士・中小企業診断士などが申請でき、認定されると、中小企業の補助金申請や経営改善支援を行う際に「国のお墨付き」があるとみなされます。

認定支援機関になるメリット

創業支援を行う上で、認定支援機関になることで得られる具体的なメリットは以下の通りです。

メリット 内容
信頼性の獲得 国の認定という第三者評価があるため、創業者や金融機関からの信頼度が高まる
補助金申請の支援資格 ものづくり補助金などの一部補助金は、認定支援機関の関与が必須
金融機関との連携強化 金利優遇(最大0.4%引下げ)や融資上限額拡大(2倍まで)などの支援が可能
顧問料の単価アップ 権威性がつくことで、単価の高い顧問契約に結びつきやすくなる(最大3倍事例あり)
成功率UP・収益性向上 融資成功率は85%以上、報酬体系(2〜5%)により高収益モデルが構築できる

認定取得の要件と流れ

認定には一定の実務要件と申請手続きが必要です。以下にステップごとの流れを解説します。

ステップ1|要件確認

税理士・公認会計士等の国家資格を持ち、3年以上の実務経験があること
・独立開業していなくても、所属法人を通じての申請も可

ステップ2|申請書類の準備

・事業計画書(経営支援の方針や体制などを明記)
・実績証明書(これまでの経営支援経験、融資や補助金実績など)

ステップ3|中小企業庁への申請・審査

・年数回の申請受付期間が設けられており、電子申請で提出
・書類不備や不明瞭な記載があると差し戻しされるため、丁寧な作成が必要

ステップ4|認定・登録

・認定されると、「認定支援機関一覧」に公式掲載
・登録後は、補助金の支援や経営改善支援計画の実施などが可能に

認定支援機関になるメリット


認定後にできるようになること(創業支援での実例)

分野 認定支援機関だからできること
創業融資支援 日本政策金融公庫などとの面談に同席・書類支援で融資成功率UP
補助金支援 ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金などで「加点対象」や「支援要件」に該当
金融機関との連携 信用保証協会の保証料減額や、制度融資の推進に貢献
継続顧問契約 信頼性により長期契約・紹介の増加


創業者に響くサポートの実務ノウハウ

融資サポートの実践フロー

1.初回相談:ヒアリング、資金使途、事業構想の明確化
2.事業計画策定:5W1Hで数値化された計画と実行ロードマップ
3.必要書類準備:創業計画書、収支予測、資金繰り表など
4.申請・面談同席:金融機関との面談に同行し信頼性UP
5.融資実行・アフターケア:実行後の報告と継続支援

融資支援では「成功報酬2~5%」が相場で、税理士にとっても収益性の高い業務です。

補助金支援の実践術

補助金名 最大金額 支援内容
ものづくり補助金 5,000万円 設備・ITシステム導入
小規模事業者持続化補助金 200万円 販路開拓・生産性向上
IT導入補助金 450万円 ITツール・DX推進
事業再構築補助金 1.5億円 新分野展開・業態転換

補助金支援では、着手金3〜10万円+成功報酬10〜15%が一般的です。

採択されるためのポイント

・数値に裏付けられた具体的事業計画
・国の政策と整合性のあるテーマ設定
独自性・競合優位性の明示
・財務基盤の健全性
・実施体制の明確化(人員配置・実行スケジュール)

顧客獲得のためのマーケティング戦略

単に「補助金に強い」と謳うだけでは顧問先獲得にはつながりません。具体的な戦略が必要となります。

① 特化型ポジショニング ―「誰の、どんな課題を解決するか」を明確に

税理士業務は基本的に「何でも屋」に見られがちですが、創業支援分野では専門特化こそが信頼と差別化につながる武器です

例:

・飲食業の創業支援に特化」
・「美容サロン専門の補助金・融資サポート」
・「副業から法人化する人向けの創業融資特化」

このように絞ることで、検索でも刺さりやすく、紹介もしやすくなります。

ポジショニング設計の3視点:

視点 内容
業種 飲食、美容、IT、建設、医療など
創業ステージ 創業直後、法人化直前、拠点拡大期など
支援内容 融資特化、補助金特化、資金調達全般など


② デジタルマーケティング ― SNS・SEOを活用して「見つけてもらう仕組み」をつくる

SEO(検索対策)

「地域+創業融資」「業種+補助金」などで検索されやすいキーワードでブログ・LP(ランディングページ)を設置。

例:

・「渋谷 創業融資 税理士」
・「美容室 補助金 サポート」
→ ホームページで「実績事例」「採択率」「料金体系」を見せることで信頼獲得につながります。

SNS(特にXやInstagram)

・「補助金の公募開始情報」
・「融資面談でよく聞かれる質問」
・「支援成功事例」
→ 創業者が「検索してフォローする」「気軽に相談DMを送る」導線を整えることができます。

③ 紹介ネットワーク構築 ― 士業や金融機関と組んで案件を“自然に増やす”

創業者と最初に接点を持つのは、以下のような関係者であることが多いです。

提携先 創業者との接点タイミング
金融機関 融資相談時
司法書士 法人設立時
社労士 雇用開始時
商工会・商工会議所 創業セミナー時

これらの関係者に「創業支援の専門税理士」として存在を知ってもらい、紹介フローを整備することが重要です。

例:

・共催セミナーの実施(金融機関×税理士など)
・成果報酬型で紹介依頼(着手金+成功報酬スキーム)
・記事・事例を共有して信頼構築

④ 実績の可視化 ― 数字と声で“説得力”を高める

創業者は「実績」を非常に重視します。実績は“自慢”ではなく“安心材料”として伝えるのがコツです。

表現方法の例:

・融資成功率:85%以上
・支援件数:過去3年で50件以上
・顧客の声:画像付きインタビュー、Google口コミ掲載
・採択事例:どの補助金で、いくら、どんな業種かを紹介

成果アピールのフレームワーク:

 Before(相談前の状況)→ After(支援後の結果)→ Voice(お客様の声)

これをWebサイト・パンフレット・SNSすべてに活用することで、「他の創業者にも頼られている感」が伝わり、安心感と信頼性が倍増します

なお、税理士の選び方については以下の記事をご参照ください。


6ヶ月で実現する創業支援体制構築ロードマップ

【1〜2ヶ月目】

認定支援機関申請・基礎知識習得
必要書類を揃え、中小企業庁への申請準備を行います。
・並行して、補助金・融資制度などの基礎的な専門知識をインプットします。
・早期の信頼獲得と制度活用のための“土台づくり”にあたるフェーズです。

主なアクション:
認定支援機関の申請フォーマットを確認
・事業計画書、実績の棚卸し、申請書作成
・「もの補助」「持続化補助金」などの制度を学習

【3〜4ヶ月目】

ネットワーク構築・初期案件獲得
金融機関や他士業、商工会議所などと連携を取り始める時期です。
・成果につながる初期案件を1件でも獲得できると弾みがつきます。
・顧客接点の拡大と現場感覚の習得がテーマです。

主なアクション:
・創業セミナーへの登壇・共催依頼
・司法書士・社労士との業務連携打診
・SNSやHPで創業支援の情報を発信

【5〜6ヶ月目】

実績蓄積・サービス体系確立
実績をもとに、サービス内容や料金プラン、業務フローを標準化します。
・顧問契約や紹介も増えはじめ、“選ばれる理由”を可視化する段階です。
・定型化と差別化のバランスがポイントです。

主なアクション:
・LP(ランディングページ)で強みと実績を整理
・補助金・融資の事例記事を作成
・サービスメニューをPDF化し、紹介元に共有

【6ヶ月後〜】

本格運用・継続的改善・拡大
創業支援サービスを事務所の柱業務として本格展開します。
・顧客アンケートやフィードバックをもとに、継続的な改善を図ります。
・クチコミ・紹介の仕組みも強化し、「創業といえばこの人」と呼ばれるポジションを狙います。

主なアクション:
・サービス改善アンケート実施
・成功事例を“ビフォーアフター”形式で発信
・補助金や融資制度の最新動向を顧問先に毎月案内

目標とする成果指標(KPI)

指標 数値目安 解説
新規顧客 月5社 毎月の安定した顧客獲得ペース
融資成功率 85%以上 成功体験の蓄積により信頼性アップ
平均顧問料 3万円 高付加価値化で単価アップ
年間売上増 +30% 創業支援が新たな収益源に


今すぐ始める具体的アクション

まずは、以下の「今すぐできる4つの行動」からスタートしましょう。

1.認定支援機関申請準備
 → 書類作成とスケジュールの把握から着手
2.専門知識の習得
 → 補助金・融資の制度をアップデート
3.関係機関との連携開始
 → 金融機関や商工会に連絡・情報交換
4.マーケティング戦略立案
 → 自分の強みとターゲットを明確化し、アプローチ方法を決定

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まとめ ― 税理士が創業支援に取り組むべき理由

この記事では税理士が取り組む創業支援について解説させていただきました。

この記事がお役に立てば幸いです。

執筆 ・ 監修

平川 文菜(ねこころ)

熊本出身。2018年京都大学卒業。在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。