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税理士に決算のみを依頼するメリット・デメリットを徹底分析

公開日:2025/05/29

最終更新日:2025/05/30

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「税理士って高いんでしょ?」
「毎月の顧問契約、本当に必要?」
そんな悩みを抱える個人事業主や中小企業は少なくありません。
実は最近、「決算のみ税理士にスポット依頼」する企業が増えているのをご存じでしょうか?
年間30万円~100万円にもなる顧問料に比べ、決算申告だけを依頼する方法なら、費用は半額以下に抑えられます。
とはいえ、“安い=正解”とは限らないのが経営の難しいところ。
この方法には、節税機会の損失や緊急時の対応遅れといったリスクも潜んでいます。
本記事では「決算のみ依頼」のメリット・デメリットを徹底分析し、どんな企業に適しているか、どんな注意点があるのかを分かりやすく解説します。

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決算のみ依頼とは? 顧問契約との違い

「決算のみ依頼」とは、税理士との年間契約(顧問契約)を結ばず、年1回の決算申告業務だけをスポットで依頼する形態です。

項目 決算のみ依頼 顧問契約
業務内容 決算書・申告書の作成 月次監査、税務相談、決算書作成
費用相場 年間15〜30万円 年間30〜100万円(月2.5〜8万円)
契約形態 スポット 継続
適用企業 売上1,000万円未満など 売上1,000万円超、複雑取引あり

判断の目安は以下の3点です。

年間売上:1,000万円未満
経理担当者:在籍している
節税ニーズ:高くない

決済のみ依頼とは?


決算のみ依頼の4つのメリット

1. 費用削減:年間最大70万円のコストカットが可能

税理士との顧問契約は、一般的に月額2.5万〜8万円程度、年間では30万〜100万円ほどの費用が発生します。一方で「決算のみ」の依頼であれば、年1回の決算書・申告書作成のみを依頼するため、15万〜30万円程度に抑えることができます

たとえば、年間売上1,000万未満の事業者が顧問契約を解消し、決算のみ依頼に切り替えることで、年間で50万〜70万円もの固定費削減が実現する可能性があります。 その分のコストを広告費や人材投資など本業に回すことで、より収益に直結する使い方ができる点も大きな魅力です。

補足:顧問契約では使用しない月でも費用が発生するため、稼働率に対して費用対効果が合わないと感じている企業にとって、決算のみ依頼は非常に合理的な選択肢です。

2. 本業集中:経営リソースの最適化に貢献

経理業務は煩雑であり、かつミスの許されない作業が多いため、特に中小企業では本業の時間を圧迫する要因となりがちです。

決算のみを税理士に任せることで、社内の事務負担を最小限に抑えられ、経営者は売上アップや顧客対応など、本業に注力する時間を確保できます。
また、決算書や税務申告書といった専門的かつ法的な知識を要する書類を自社だけで作成する必要がなくなることで、心理的な負担の軽減にもつながります。

特にひとり法人やスモールビジネスでは、社長が“営業・商品開発・経理”のすべてを兼任しているケースも珍しくありません。そのような事業者にとって、年1回の大仕事である決算を外注できることは、経営体力の維持に直結します。

3. 信頼性の向上:金融機関や取引先へのアピール材料に

決算書に税理士の署名があることは、第三者からの「この書類はプロが監修した正確なものである」という信頼の証となります。

特に以下のような場面で効果を発揮します。

融資を受ける際の信用力アップ
 → 銀行は自己作成の決算書よりも、税理士の署名入りのものを重視する傾向があります。

取引先との契約や資本金調達の際
 → 適正な会計処理をしていることが客観的に示され、信頼獲得につながる。

さらに、税理士の関与によって、税務署に提出する申告書も正確性が高まるため、税務調査リスクの低減にも効果があります。税理士がチェックしている=誤りや脱税リスクが低いと判断されやすいためです。

4. ミス防止:税法改正や期限管理への確実な対応

法人税・消費税・所得税などの税法は、毎年のように改正が行われており、その内容は非常に複雑です。自力で最新の制度に対応しながら正確な申告を行うことは、時間的・知識的にハードルが高いのが現実です。

決算のみとはいえ、税理士に依頼することで以下の点で安心が得られます

・税法改正への対応:最新の制度を反映した申告書を作成
・期限管理の徹底:提出期限を守り、延滞税や加算税のリスク回避
・適正な経費計上や税務調整:見落としがちな項目の確認と是正

万が一、提出遅れや誤申告が発生した場合には、ペナルティとして最大で「本税+最大35%の加算税」が課されることもあります。そのような事態を防ぐためにも、年1回のプロの目は非常に有効です。

決算のみ依頼の4つのデメリット

次に、「決算のみ依頼の4つのデメリット」を、それぞれ詳しく解説します。費用面のメリットが大きい一方で、見落とされがちなリスクや落とし穴がある点に注意が必要です。

1. 節税機会の損失:年内対策ができず、税負担が増える恐れ

顧問契約をしていれば、期中から税理士とコミュニケーションを取りながら、適時に節税対策(設備投資・役員報酬の調整・経費計上の見直しなど)が行えます
しかし、決算のみの依頼では、申告期限ギリギリのタイミングで相談が始まるため、できる対策がほとんど残されていません

節税機会を逃す典型例
・決算直前に利益が出すぎて節税の選択肢が限られる
・必要な届出(青色申告の承認等)が提出期限を過ぎてしまう
・必要経費や減価償却の見落とし

 損失規模の目安適切な節税が行えなかったことで、年間10〜50万円程度の税負担増つながるケースもあります

2. 経営支援の不足:タイムリーなアドバイスを受けられない

税理士の本当の価値は、単なる決算書作成だけではありません。
経営状況に応じた財務的なアドバイスや、キャッシュフロー改善・補助金申請の助言など、“経営の参謀”としての役割も大きいのです。

しかし、決算のみ依頼の場合は、年間の業績推移や経営環境の変化を把握してもらえないため、

・収益悪化に気づくのが遅れる
・課題に対する打ち手が打てない
・数字を使った経営判断に迷いが出る

といった影響が生じるリスクがあります。

特に注意が必要なのは創業初期や資金調達期の企業。経営の方向性にブレが生じた場合の「セカンドオピニオン」がないことは、後々大きな痛手になることも。

3. 税務調査リスク:期中の把握がなく、不利な展開に

税務調査の対応では、「日々の取引内容を税理士がどこまで把握しているか」が大きな分かれ目になります。
決算のみの依頼では、帳簿や領収書を一括で渡すだけになるため、

税理士が取引の背景を把握できない
調査官の質問に即答できない
修正申告や追徴課税になる可能性が高い

といった展開に陥ることがあります

また、期中の帳簿入力にミスがあっても、決算時には気づかれずに流されるリスクもあります。

税務署側も「税理士が期中から関与していない」場合は、調査対象とする優先順位が高くなるといわれるほど、リスク要因として認識されています

4. 緊急時の対応が困難:相談窓口がなく、判断が遅れる

経営をしていると、次のような「突発的な判断」が求められる場面があります。

税務署からの通知・問い合わせ対応
高額な設備投資のタイミング
新規事業の立ち上げに伴う税務判断
役員報酬の見直しや賞与支給の是非

顧問契約があれば、これらに即時にアドバイスを得ることができますが、決算のみ依頼では、「対応できるのは決算時のみ」というスタンスの税理士が多く、突発的な相談に応じてもらえない、もしくは別料金になるケースもあります

こうした遅れが「判断ミス」や「機会損失」に直結する可能性があります。

費用相場の実例とコスト比較

税理士に業務を依頼する際の費用は、「決算のみ依頼」か「顧問契約」かによって大きく異なります。自社の売上規模や業務内容に応じて、どちらが適しているかを判断する上で、具体的な費用感の比較はとても重要です。

1. 決算のみ依頼の費用相場

「決算のみ依頼」は、年1回、決算書と税務申告書の作成のみを依頼するスポット契約です。売上規模によって金額が変わりますが、以下のような相場が目安です。

年間売上高 決算のみ依頼の費用相場
~1,000万円 10〜15万円程度
1,000万〜3,000万円 12.5〜20万円程度
3,000万〜5,000万円 15〜25万円程度
5,000万〜1億円 18〜30万円程度
1億円以上 要相談(30万円〜が多い)

補足:消費税の申告が必要な事業者には、+3〜5万円程度の追加料金が発生するケースがあります。また、業種の特殊性(IT・医療・建設など)や資料の煩雑さによっても費用は変動します。

2. 顧問契約の費用相場

一方、顧問契約とは、月次で税理士が会社の帳簿や経営状況をチェックし、必要な相談にも随時対応する継続契約です。決算・申告も含まれています。

年間売上高 顧問契約の費用相場(月額換算)
~1,000万円 月額2.5〜3万円(年間30〜40万円)
1,000万〜3,000万円 月額3〜4万円(年間40〜50万円)
3,000万〜5,000万円 月額4〜5万円(年間50〜60万円)
5,000万〜1億円 月額5〜7万円(年間60〜80万円)
1億円以上 月額7万円〜(年間80万円〜)

顧問契約では、節税提案や税務調査対応、各種届出書の作成、補助金申請アドバイスなども含まれる場合が多く、単なる数字の比較だけでなく、付随サービスの内容も踏まえて判断する必要があります

3. 決算のみ vs 顧問契約:コスト削減額の試算

両者の費用差を以下にまとめます。

年間売上高 決算のみ依頼 顧問契約 年間削減額(目安)
~1,000万円 10〜15万円 30万円〜 約15〜20万円
1,000万〜3,000万円 12.5〜20万円 40万円〜 約20〜30万円
3,000万〜5,000万円 15〜25万円 50万円〜 約25〜35万円
5,000万〜1億円 18〜30万円 60万円〜 約30〜40万円
1億円以上 要相談(30万円〜) 80万円〜 約50万円〜

平均削減額の目安
→ 年間30万円前後の固定費削減が可能
コスト削減率の目安
→ 顧問契約比で50〜70%の削減効果

費用相場詳細


4. 判断基準は「費用」だけでなく「事業フェーズと体制」

判断ポイント 選ぶべきプラン
売上1,000万円未満 決算のみ依頼でコスト削減
経理担当者がいる 決算のみで十分な体制あり
節税を重視しない 決算対応だけでもOK
売上1,000万円超 顧問契約で節税と調査対策を重視
経理体制が弱い 顧問契約で継続的支援を受ける
今後の成長が見込まれる 顧問契約で投資計画に対応


決算のみ依頼を成功させるための対策とチェックポイント

事前準備を徹底する

・決算3ヶ月前から資料を整理
・月次試算表を作成しておく
・領収書・請求書を分類・保存

税理士の選定に注意

・スポット業務に慣れているか
・料金体系が明確か
・緊急時対応の体制があるか

経理スキルを補完する

・会計知識を継続学習
・税制改正情報をチェック
・外部セミナーや勉強会に参加

注意点とリスク対策


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まとめ

この記事では税理士に決算のみを依頼するメリット・デメリットについて分析しました。

この記事がお役に立てば幸いです。

執筆 ・ 監修

平川 文菜(ねこころ)

熊本出身。2018年京都大学卒業。在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。