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税理士法に基づく独占業務とは?税理士以外が行うと違法?


公開日:2025/05/26
最終更新日:2025/05/27
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「この程度のアドバイスであれば問題ないはず」
そうした軽い判断が、思わぬ法的リスクを招くことがあります。
税金に関する相談や申告書の作成、それは本当に税理士資格がなくても許される行為でしょうか?
税理士法では、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」の3業務を、税理士の独占業務として明確に定めています。
この範囲を逸脱した行為は、たとえ善意であっても「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」という厳しい罰則の対象となり得ます。
行政書士やファイナンシャルプランナー、コンサルタントの方々によく見られる“グレーゾーン”業務も、注意が必要です。
「知らなかった」では済まされないのが税務業務の世界。
ご自身の業務を守るためにも、今こそ正しい知識と業務範囲の確認が求められます。
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税理士の独占業務とは?
税理士の独占業務は、法律(税理士法)によって「税理士だけが行える業務」として明確に定められており、以下の3つが該当します。これらは税理士資格を持たない者が行うと「非税理士業務」として違法になります。
税理士の3つの独占業務
① 税務代理(ぜいむだいり)
税務代理とは、納税者に代わって税務署などの行政機関に対し、申告・申請・請求・不服申立てなどの手続きを行う業務です。
例えば、確定申告書の提出を代行したり、税務調査の立会いをしたりするのがこれに該当します。
税務署とのやり取りは専門的な知識を必要とするため、税理士でなければ行うことができません。
② 税務書類の作成
税務署などに提出する書類を、納税者の代わりに有償で作成する業務です。
対象となるのは、確定申告書・相続税申告書・消費税の届出書など、税に関連する全ての書類です。
単なる帳簿づけや試算表の作成ではなく、提出用の「正式な書類」を作る場合は、税理士の資格が必要です。
③ 税務相談
税務相談とは、納税者からの税金に関する具体的な相談に応じ、助言・指導を行う業務です。
たとえば、「青色申告のメリットは?」「この経費は落とせる?」「法人化した方が節税になる?」といった相談に有償で答える行為は、税理士の独占業務とされます。
無料での一般的な税知識の提供は問題ありませんが、具体的で個別のアドバイスを継続的に有償で提供する行為は、税理士でなければ違法となります。
税理士でなくてもできること
なお、以下の業務については税理士資格を保有していなくても行うことが出来ます。
・記帳代行(仕訳入力や帳簿作成)は独占業務ではないため、無資格者でも可能
◦ただし、消費税の判断がかかわる場合は税理士資格が必要となります。
税理士に独占業務を依頼するタイミングは?
主に以下のタイミングで依頼が必要となります。
タイミング | 依頼が有効な理由 | 想定される独占業務 |
確定申告の時期(毎年2〜3月) | 複雑な控除や経費の判断、節税の相談が必要なため | 税務代理、税務書類の作成、税務相談 |
法人を設立したとき | 開業初年度は会計処理や税務の不安が多いため | 税務代理、税務書類の作成、税務相談 |
相続が発生したとき | 相続税の申告は特例の適用や評価の知識が必須 | 税務書類の作成、税務相談 |
税務調査の通知が届いたとき | 調査官との対応や書面作成に専門的知識が必要 | 税務代理、税務相談 |
事業の売却・M&A時 | 売却益や株式譲渡の税務処理が複雑 | 税務相談、税務書類の作成 |
不動産を売却したとき | 譲渡所得の計算や特例適用に高度な判断が必要 | 税務書類の作成、税務相談 |
節税対策を本格的にしたいとき | 税制の正確な理解と合法的な対策が求められる | 税務相談 |
税理士以外が税務関連業務を行うとどうなる?
税理士以外の者が、税理士の独占業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)を有償で行った場合は、「税理士法」に違反する違法行為となります。
違法行為に該当すると、刑事罰や業務停止命令、顧客トラブルなどの深刻なリスクが発生する可能性があります。
税理士法違反となる主なケース
以下のような行為は、たとえ善意であっても税理士以外が有償で行うと違法です。
・有償で他人の確定申告書を作成してあげる
・税務署とのやりとりを代理で行う(税務調査の立会い等)
・「この控除は使える?」「節税するにはどうすれば?」といった相談に有料で答える
・顧問契約の中で、税額の計算・税務署提出書類の作成を含めてしまう(FP・行政書士など)
行為の例 | 違法になるか? | 理由 |
他人の確定申告書を有償で作成 | ❌ 違法 | 「税務書類の作成」に該当 |
税務署に代わって提出・説明 | ❌ 違法 | 「税務代理」に該当 |
有料で節税アドバイス | ❌ 違法 | 「税務相談」に該当 |
会計帳簿の記帳代行 | ✅ 合法 | 税理士の独占業務ではない |
違法行為のリスクとその罰則
税理士法第60条に基づき以下の罰則が科されます。
内容 | 詳細 |
罰則 | 2年以下の懲役 or 100万円以下の罰金(またはその両方) |
対象者 | 無資格で税理士業務を行った者、およびそれを手伝った者(従業員含む) |
追徴課税の可能性 | 非正規な税務処理により、顧客に追加課税・加算税・延滞税が発生する場合あり |
業務停止命令 | 非税理士行為を反復継続している事業者は、行政処分を受ける可能性も |
実際に起きた事例
❌ 悪質な副業税理士もどき:SNSなどで節税アドバイスを販売し、告発された例あり。
❌ 行政書士が税務相談を継続的に行い懲戒:行政書士は税務業務ができないため、懲戒処分の対象に。
税理士以外でも「税理士業務」が一部可能な場合
税理士以外の者でも、一定の条件下で「税理士業務」に近い行為が合法的に許容される例外があります。これは税理士法の中でも特例や他法令による補完によって認められているものです。
対象者・状況 | 可能な業務内容 | 法的根拠・留意点 |
弁護士 | 税務代理・税務書類の作成・税務相談すべて可能 | 弁護士法第3条、税理士法第51条により明示的に除外されている(弁護士は税理士登録不要で実施可能) |
本人またはその従業員 | 自分自身の申告や、雇用関係にある企業の税務処理 | 税理士法の規制外(第三者性がないため) |
行政書士 | 記帳代行・経理支援など(ただし税務判断を伴わない場合) | 税務相談・申告書作成は違法。帳簿作成・整理などまでが限界 |
ファイナンシャルプランナー(FP) | 一般的な税制の知識提供・ライフプラン上の税の影響など | 個別具体的な税額計算や申告書作成は不可。あくまで一般論まで |
大学教授や研究者 | 学術目的の税務研究・講義・執筆など | 営利活動に該当しない範囲であれば自由。ただし税務相談を受けると違法 |
税理士試験合格者(未登録) | 税理士業務は不可 | 試験合格者でも、税理士登録・実務経験がなければ業務はできない(無資格者扱い) |
税理士の独占業務以外の仕事とは?
税理士の業務は「独占業務(税理士にしかできない業務)」に加えて、「独占ではないが税理士として行える業務」「税務に関連する周辺業務」も多く存在します。これらは税理士の知識や信頼性を活かして行う付加価値業務です。
業務カテゴリ | 内容 | ポイント |
会計業務 | 記帳代行、試算表・月次決算書の作成、会計ソフト導入支援など | 多くの中小企業が委託している。税務署に出す書類でなければ独占ではない |
経営コンサルティング | 資金繰り計画、利益改善アドバイス、業績管理支援 | 節税以外の「経営」に踏み込むサービス |
事業承継・相続対策支援 | 事業承継スキームの構築、相続税評価額の試算、生前対策の提案 | 独占業務に直結しないシミュレーションや助言はOK |
M&A・組織再編支援 | デューデリジェンス(財務調査)、株価評価、税務ストラクチャリング支援 | 会計士やコンサルとの連携も多い分野 |
補助金・助成金申請支援 | 申請書作成支援、経営計画策定のサポート | 行政書士が行う業務と近く、連携が重要 |
会社設立・法人化支援 | 設立手続のアドバイス、税務署提出書類の作成・届出 | 登記は司法書士、だが税務関係は税理士が強い |
クラウド会計導入支援 | freee、マネーフォワード等の初期設定・運用支援 | IT知識が求められる新領域。若手税理士が得意とする分野 |
セミナー・執筆・講演 | 税務・経営に関する講演、コラム執筆、YouTube解説など | 独占業務ではないが、ブランディング・集客につながる |
税理士とそれ以外の士業のすみわけは?
税理士と他の士業(弁護士・司法書士・行政書士・社会保険労務士など)の業務範囲のすみわけは、実務上のトラブルを防ぐうえで非常に重要です。以下に主要士業と税理士の業務が交わる部分・すみわけを整理します。
士業 | 主な業務内容 | 税理士との関係・すみわけ |
弁護士 | 法律相談、訴訟代理、契約書作成、刑事弁護など | ✅【例外】税務代理・税務相談も可 (税理士法51条) |
司法書士 | 登記、供託手続き、不動産・商業登記、成年後見など | 税務相談・申告書作成は❌NG 会社設立で登記 → 税理士が税務署手続き |
行政書士 | 官公庁向け書類の作成(許認可申請、契約書等) | 税務書類の作成・税務相談は❌ 違法 記帳代行や経営計画書作成などは⚪可能 |
社会保険労務士(社労士) | 労務管理、社会保険手続、就業規則の作成など | 給与計算や社会保険の分野は社労士 ただし、年末調整や法定調書の作成は税理士 |
中小企業診断士 | 経営コンサルティング、事業計画の策定支援など | 税金の具体的アドバイスは❌NG 数値計画などの分析支援は⚪可能 |
ファイナンシャルプランナー(FP) | 家計相談、保険・投資・住宅ローンなどのアドバイス | 一般的な税制解説は⚪可能 有償の税務相談・申告作成は❌NG |
弁理士 | 特許・商標の出願手続き、知的財産に関する業務 | 通常の税務業務は❌NG IP収入の税務支援などは税理士が対応 |
税理士と司法書士の違いについては以下の記事をご参照ください。
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まとめ
税理士法により、税務代理・税務書類の作成・税務相談の3業務は税理士の独占業務として厳格に定められています。税理士以外がこれらの業務を有償で行った場合は違法となり、懲役・罰金などの刑事罰を受ける可能性があります。
行政書士・FP・コンサルタントなどが誤って税務業務を手掛けるケースもあり、顧客トラブルや信頼失墜、業務停止処分につながるリスクがあるため注意が必要です。
「この程度なら大丈夫だろう」は通用しません。報酬の有無・継続性・具体性を冷静に判断し、グレーゾーンを避けて活動することが不可欠です。
税務関連の支援を行いたい場合は、正しい連携と業務分担が必須です。
この記事がお役に立てば幸いです。

平川 文菜(ねこころ)