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税理士は文系向き?理系向き?文系出身者が強みを活かす方法

公開日:2025/05/16

最終更新日:2025/05/23

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「文系出身だけど、税理士になって通用するのだろうか?」
そんな不安を感じている方は、実はチャンスを見逃しているかもしれません。

税理士の仕事は、ただ数字を扱うだけではありません。
ときに経営者の悩みに寄り添い、ときに相続の相談に耳を傾ける――
人と人との関係を築き、複雑な制度をわかりやすく伝える力が求められます。

そこで活きるのが、文系出身者ならではの「言葉の力」と「対話の力」。
税法の知識以上に、あなたの“人間理解力”が活かせる場面がたくさんあります。

今回は、文系出身の税理士が活躍できるフィールドと、その理由についてご紹介します。

文系出身でも税理士になれるのか?

「税理士は理系向きの資格」と思われがちですが、実は税理士試験の合格者の多くは文系出身です。実際、経済学部・商学部・法学部といった文系学部出身者が毎年多く合格しており、文系出身だからといって不利になることはありません。

税理士試験において求められるのは、高度な数学力ではなく「論理的思考力」と「継続力」です。試験科目の多くは計算問題を含んでいますが、それは中学〜高校レベルの数学知識で十分対応可能です。むしろ、条文の理解や理論の整理、複雑なルールを体系的に覚える力が問われるため、文系的なアプローチのほうが有利に働くこともあります。

また、税理士試験は一度に全科目を合格する必要がないため、働きながら少しずつ受験することが可能です。この「長期戦」を戦い抜くには、地道な努力を積み重ねる継続力が不可欠。勉強の習慣化が合格の鍵を握ります。

つまり、文系出身でも「やるべきことを、やるべき期間に、ちゃんとやる」ことができれば、税理士になることは十分に可能なのです。

文系出身者の強みと弱みとは?

文系出身者が税理士を目指すにあたっては、得意なことと苦手なことを正しく理解しておくことが大切です。以下に、代表的な「強み」と「弱み」を整理します。

強み:国語力・暗記力・言語的処理能力

文系出身者は、文章を読み解く力や語句を正確に覚える力に長けている傾向があります。
税理士試験では、税法の条文や規定を読み解き、理論的に記述する問題も多く出題されます。したがって、

・条文のニュアンスを正確に理解する力
・抽象的なルールを整理しながら覚える力
・記述試験で論点を明確に伝える力

これらの力は、まさに文系的素養の活きる場面です。

弱み:計算アレルギー・財務諸表への苦手意識

一方で、「数字が苦手」「簿記に馴染みがない」といった計算アレルギーを抱える人も少なくありません。特に、財務諸表を読む・作るといった経験がないと、初学時に強い抵抗感を持つケースもあります。

ただし、これは「慣れ」で克服できる部分でもあります。
簿記や財務諸表の読み方は、ルールとパターンの理解さえ進めば、暗記に頼らず論理的に解ける分野です。初期段階を越えれば、文系出身でも十分に対応可能です。

文系出身者におすすめの科目選択と順番

税理士試験は科目合格制のため、どの科目から始めるか、どんな順番で受験するかによって、学習効率やモチベーションに大きな差が出ます。文系出身者にとっては「計算に不安がある」「財務諸表を見慣れていない」という事情もあるため、自分に合ったスタートを切ることが重要です。

初学者向け:簿記論 → 財務諸表論 → 法人税法の順番が王道

この順番は、もっともスタンダードで無理のない進め方とされています。

簿記論:計算中心で、商業簿記・会計の基本が学べる導入科目。基礎から学べるため初学者におすすめ。
財務諸表論:簿記論と重なる論点も多く、理論と計算の両方を扱う。簿記論との並行受験も可能。
法人税法:ボリュームが多く難易度も高いが、簿記・財表の知識を土台に学習できる。必須科目の1つ。

この順番で進めれば、知識の積み重ねがスムーズになり、試験対策の効率も上がります

苦手克服のために「理論」から取り組む戦略も

文系出身者の中には、いきなり計算問題に向き合うのが怖いという人も少なくありません。そういった場合は、まず理論中心の財務諸表論から取り組む方法も有効です。

特に、国語力や暗記力に自信がある人は、理論問題で早めに「得意感覚」をつかむことで学習意欲が高まります。財表の理論をある程度身につけた後、簿記論などの計算科目に入ると、理解しやすくなるケースもあります。

数学が苦手な人でも理解できる簿記の学び方

「簿記=数字の世界」と聞くと、数学が苦手な文系出身者は不安に感じるかもしれません
ですが、簿記は“計算力”よりも“ルールの理解”と“感覚”が重要な学問です。実は、数学アレルギーの人こそ、正しい手順で学べばスムーズに理解できます

ステップ①:まずは「仕訳」を感覚でつかむ

簿記の基本は、「仕訳」という“お金の出入りを記録する言葉”を覚えることから始まります。
仕訳はルールに従って分類・記録するだけなので、難しい計算は不要です。

例えば:
・商品を現金で仕入れた → 「仕入/現金」
・家賃を銀行振込した → 「支払家賃/普通預金」

こうした取引の記録を、まるで日記のように書いていく感覚で学びましょう。
意味がわかれば、自然と手が動くようになります。

ステップ②:イメージで覚える!ビジュアル教材の活用

仕訳や勘定科目は、言葉だけで覚えようとすると混乱しやすいもの。
そこでおすすめなのが、図解やイラスト付きの簿記教材です

・「T字勘定」でお金の動きを目に見える形にする
・「勘定科目マップ」でジャンルを視覚的に整理する

こうしたビジュアル教材を使えば、文系的な“言語処理”に頼るのではなく、“空間認識”で理解が進みます

ステップ③:動画で“動き”をインプットする

最近では、YouTubeなどに初心者向けの簿記解説動画が多数公開されています。 講師の声とスライドを組み合わせた動画は、読んで理解するのが苦手な人にとって非常に効果的です。

特におすすめなのが、
・「なぜそうなるか?」を丁寧に解説してくれる動画
・初心者にやさしいテンポで進む講義スタイル
・実務的な例を使って教えてくれるシリーズ

「わかる人の話を、何度も聞いて真似する」ことが、簿記の最初の壁を突破する一番の近道です。

働きながら税理士を目指す文系社会人の勉強計画

社会人になってから税理士を目指すのは、決して珍しいことではありません。特に文系出身者にとっては、「数字が苦手」「勉強のブランクがある」といった不安もあるかもしれませんが、実際には多くの文系社会人が働きながら合格を勝ち取っています。

重要なのは、「無理のない学習ペース」と「自分に合った学び方」を見つけることです。

平日・休日別の学習スケジュール例

■ 平日(仕事あり)

時間帯 内容
朝6:00〜7:00 インプット学習(理論や動画)
通勤中 音声講義や理論の暗記復習
夜20:00〜22:00 演習問題・過去問演習

▶ ポイント:朝か夜どちらかに1.5~2時間確保できるだけでペースは作れます。

■ 休日(土日祝)

時間帯 内容
午前9:00〜12:00 理論学習・暗記
午後13:00〜16:00 計算演習(簿記・税法など)
夜19:00〜21:00 過去問や模擬試験の復習

▶ ポイント:休日で一気に5~6時間確保して、週単位でバランスを取るのが理想。

独学 vs 専門学校の使い分け

■ 独学が向いている人

・自分で計画を立てて勉強を進められる
・コストを抑えたい
・理論科目(財務諸表論など)中心に始めたい

▶ 参考書+YouTube+市販の過去問集でも、初期段階のインプットは可能です。

■ 専門学校が向いている人

・学習計画の管理やペース配分が苦手
・計算科目(簿記論・法人税法)でつまずきやすい
・模試や質問対応のサポートが欲しい

特に税法科目はボリュームが大きく独学では非効率なケースが多いため、専門学校の力を借りるのがおすすめです。

文系出身の税理士が活躍するフィールドとは?

① 相続・事業承継分野:感情と制度をつなぐ力が必要

相続税や事業承継は、単なる税務計算だけでなく「家族間の感情」「経営者の意思」「後継者との関係性」といった人間関係の理解が不可欠な分野です。
文系出身者は、相手の話をじっくり聞き、状況を言語化するのが得意。こうした力が、相続・承継の現場では大いに役立ちます。

・相続人との丁寧なコミュニケーション
・円満な承継に向けた説明資料の作成
・法律や制度のかみ砕いた解説

「話せる税理士」は、この分野で特に重宝されます。

② コンサルティング業務:論理的思考と対話力を活かす

経営改善・資金繰り支援・補助金申請など、いわゆる“税務の外側”の支援業務も、文系出身の税理士が得意とするフィールドです。

税理士には、経営者の考えをくみ取り、整理し、必要な情報を組み立ててアウトプットする力が求められます。

・数字の背景を言語化する
・経営者と同じ目線で議論する
・計画書・事業戦略のストーリーを描く

こうした「ビジネス翻訳家」としての役割に、文系の感覚が活きてきます。

③ 経営者とのコミュニケーション:信頼関係の構築力

税理士の仕事は「数字を扱う仕事」であると同時に、「人と向き合う仕事」でもあります。
とくに中小企業の顧問税理士として活躍するには、経営者との継続的な信頼関係が欠かせません

・難解な制度をわかりやすく説明する
・相手の立場に立って提案を考える
・雑談力・質問力で関係を深める

文系出身の「対話力」は、このようなコミュニケーションの場面で圧倒的な強みとなります。

税理士は文系向き?理系向き?文系出身者が強みを活かす方法 -まとめ

文系出身の税理士は、「相続・事業承継」「経営コンサルティング」「顧問業務」など、人と向き合うフィールドで強みを発揮できます。
税務の知識だけでなく、対話力・説明力・共感力が求められる場面では、文系ならではの言語的スキルや論理的思考力が大きな武器となります。
数字だけに強いだけでは務まらない、“人間くさい税理士像”を体現できるのが文系出身者の最大の魅力です。

この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

執筆 ・ 監修

平川 文菜(ねこころ)

熊本出身。2018年京都大学卒業。在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。