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公開日:2025/05/16
最終更新日:2025/05/23

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2025年4月、育児支援制度に大きな転機が訪れました。
「出生後休業支援給付金」という新制度がスタートし、共働き家庭の育児を経済的に後押しします。
税理士として、企業や従業員がこの制度を漏れなく活用できるようサポートする機会が増えています。
特に中小企業では、人事労務の知識が不足し、制度を活用できずに損をしているケースも。
就業制限や支給額の計算ルールなど、税務と社会保険にまたがる知識が求められます。
本記事では、出生後休業支援給付金の概要から、申請の流れ、就業上の注意点まで網羅的に解説。
「知らなかった」では済まされないこの制度、今こそ顧問先への価値提供のチャンスです。
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出生後休業支援給付金とは?
「出生後休業支援給付金」は、子の出生直後の一定期間に、雇用保険の被保険者とその配偶者がともに14日以上の育児休業を取得した場合に、既存の育児休業給付金に加えて支給される給付金です。この制度は、特に男性の育児休業取得を促進し、共働き家庭の育児を支援することを目的としています。
・支給額:休業開始前賃金の13%相当額が、最大28日間支給されます。
・既存の育児休業給付金:休業開始前賃金の67%相当額が支給されます。
・合計:育児休業給付金と出生後休業支援給付金を合わせて、休業開始前賃金の80%相当額が支給されます。
これにより、育児休業中の所得減少を軽減し、育児と仕事の両立を支援します。
出生後休業支援給付金の対象者と申請条件
対象者
以下の条件をすべて満たす雇用保険の被保険者が対象となります。
1.育児休業の取得:同一の子について、出生時育児休業給付金が支給される産後パパ育休または育児休業給付金が支給される育児休業を、対象期間内に通算して14日以上取得していること。
2.配偶者の育児休業取得:被保険者の配偶者が、子の出生日または出産予定日のうち早い日から、出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間に、通算して14日以上の育児休業を取得していること。
◦例外:以下のいずれかに該当する場合は、配偶者の育児休業取得は要件とされません。
・配偶者がいない場合
・配偶者が自営業者やフリーランスなど、雇用される労働者でない場合
・配偶者が産後休業中の場合
・その他、配偶者が育児休業を取得できない合理的な理由がある場合
3.被保険者期間:出生後休業を開始した日前2年間に、みなし被保険者期間が通算12か月以上あること。
対象期間
育児休業の取得が以下の期間内である必要があります。
・男性(父親)または養子の場合:子の出生日または出産予定日のうち早い日から、出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日まで。
・女性(母親)で養子でない場合:子の出生日または出産予定日のうち早い日から、出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して16週間を経過する日の翌日まで。
対象となる雇用形態と職種
出生後休業支援給付金の対象となるのは、雇用保険の被保険者です。具体的には、以下のような雇用形態が含まれます。
・正社員
・契約社員
・パートタイマー
・アルバイト
ただし、日々雇用される者や、雇用期間が短期間である者など、雇用保険の被保険者とならない場合は対象外となります。
職種については特に制限はなく、雇用保険の被保険者であれば、業種や職種に関係なく対象となります。
申請に必要な書類と手続きの流れ
必要書類
出生後休業支援給付金の申請には、以下の書類が必要です。
1.育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書
2.雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
3.母子健康手帳の写し(出生証明欄)
4.賃金台帳または給与明細の写し(休業前6か月分)
5.出勤簿またはタイムカードの写し(休業前6か月分)
6.育児休業申出書および育児休業取扱通知書
7.配偶者の育児休業取得状況を確認できる書類(該当する場合)
8.世帯全員について記載された住民票の写し(続柄あり)(該当する場合)
9.振込先口座情報(通帳やキャッシュカードのコピー)
10.本人のマイナンバー
手続きの流れ
1.申請準備:必要書類を準備し、育児休業給付金または出生時育児休業給付金の初回申請と併せて、出生後休業支援給付金の申請を行います。
2.申請方法:原則として、事業主が被保険者に代わって、事業所の所在地を管轄するハローワークに申請します。
3.申請期限:育児休業開始日から起算して4か月を経過する日の属する月の末日までに申請を行う必要があります。
4.支給決定:申請内容が審査され、要件を満たしていれば、出生後休業支援給付金が支給されます。
育児と就業の両立を支援する法改正の背景
近年、少子化対策や共働き家庭の増加を背景に、仕事と育児の両立支援が重要な課題となっています。特に、男性の育児休業取得率の低さや、育児中の柔軟な働き方の選択肢の少なさが指摘されてきました。これらの課題に対応するため、2025年4月1日から以下のような法改正が行われました。
主な改正点
・育児休業取得状況の公表義務の拡大:従業員数300人超の企業に対し、男性の育児休業取得率等の公表が義務付けられました。
・所定外労働の制限対象の拡大:これまで3歳未満の子を養育する労働者が対象でしたが、小学校就学前の子を養育する労働者にも拡大されました。
・柔軟な働き方の推進:育児のためのテレワーク導入や、短時間勤務制度の代替措置としてテレワークを追加するなど、柔軟な働き方を実現するための措置が講じられました。
2025年の法改正がもたらす影響
今回の法改正により、企業や労働者に以下のような影響が予想されます。
企業への影響
・制度整備の必要性:育児休業取得状況の公表義務に対応するため、企業は育児休業制度の整備や取得促進策の導入が求められます。
・柔軟な働き方への対応:テレワークや短時間勤務制度の導入・拡充により、多様な働き方への対応が必要となります。
労働者への影響
・育児休業取得の促進:男性の育児休業取得が促進され、家庭での育児参加が進むことが期待されます。
・柔軟な働き方の選択肢の拡大:育児中の労働者が、テレワークや短時間勤務など、自身の状況に応じた働き方を選択しやすくなります。
時短勤務と出生後休業支援給付金の関係
2025年4月1日から、新たに「育児時短就業給付金」が創設されました。この給付金は、2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して就業した場合に、賃金が低下するなど一定の要件を満たすと支給されます。これにより、育児休業からの復職後、時短勤務を選択する労働者の経済的負担が軽減され、柔軟な働き方が促進されます。
育児時短就業給付金の概要
・対象者:2歳未満の子を養育するために、所定労働時間を短縮して就業する雇用保険の被保険者。
・支給要件:
◦育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて、育児時短就業を開始したこと。
◦または、育児時短就業開始日前2年間に、被保険者期間が12か月あること。
・支給額:育児時短就業中に支払われた賃金額の10%相当額。ただし、育児時短就業開始時の賃金水準を超えないように調整されます。
出生後休業支援給付金との関係
「出生後休業支援給付金」は、子の出生直後の一定期間に、雇用保険の被保険者とその配偶者がともに14日以上の育児休業を取得した場合に、既存の育児休業給付金に加えて支給される給付金です。この制度と「育児時短就業給付金」は、育児休業からの復職後の柔軟な働き方を支援するという点で連携しており、労働者が育児と仕事を両立しやすい環境を整備することを目的としています。
出生後休業支援給付金の具体的な支給額と期間
支給額の計算式
出生後休業支援給付金の支給額は、以下の式で計算されます。
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 休業日数(最大28日) × 13%
・休業開始時賃金日額:休業開始前6か月間の総支給額(賞与を除く)を180で割った額。
・休業日数:育児休業を取得した日数(最大28日)。
育児休業給付金(67%)と合わせて、合計80%の給付となり、社会保険料免除の効果も含めると、実質的に手取り収入が100%に近づく仕組みです。
支給額の具体的な例
以下に、月給30万円の従業員が28日間の育児休業を取得した場合の支給額を示します。
項目 | 計算式 | 金額(円) |
賃金日額 | 300,000 × 6 ÷ 180 | 10,000 |
育児休業給付金(67%) | 10,000 × 28 × 0.67 | 187,600 |
出生後休業支援給付金(13%) | 10,000 × 28 × 0.13 | 36,400 |
合計 | 187,600 + 36,400 | 224,000 |
このように、合計で22万4,000円の給付を受けることができます。
支給期間中の就業制限と注意点
就業可能な日数と時間
育児休業期間中に一部就業する場合、以下の制限があります。
・最大就業日数:休業期間が28日の場合、最大10日間まで就業可能。
・最大就業時間:休業期間が28日の場合、最大80時間まで就業可能。
休業期間が28日未満の場合は、日数と時間が比例して減少します。
賃金支払いによる給付金の減額
休業期間中に賃金が支払われた場合、以下のように給付金が減額される可能性があります。
・賃金が「賃金日額 × 休業日数」の13%以下:給付金は減額されません。
・賃金が13%超~80%未満:育児休業給付金は「賃金日額 × 休業日数 × 80%」から支払われた賃金を差し引いた額に減額されます。
・賃金が80%以上:育児休業給付金および出生後休業支援給付金は支給されません。
出生後休業支援給付金を活用するためのポイント
1. 「夫婦で14日以上の育休取得」がカギ
・給付金を受け取るには、本人と配偶者の両方が、それぞれ14日以上の育児休業を取得していることが原則です。
・出生後8週間(母親の場合は16週間)以内という短い期間内での計画的な休業取得が必要です。
▶ 事前にパートナーとスケジュールを調整しておくことが必須。
2. 初回申請で「まとめて申請」する
・出生後休業支援給付金は、通常の育児休業給付金の初回申請時に併せて申請する必要があります。
・育児休業給付金と別に後から申請することはできないため、注意が必要です。
▶ ハローワークへの提出時に「併用申請」になっているか確認。
3. 支給対象の「最大28日間」を無駄にしない
・この給付金は、休業日数最大28日間分までが対象です。
・育児休業が14日を少し超えるだけでは満額を受け取れない可能性があります。
▶ なるべく20日〜28日の取得を推奨。
4. 休業期間中の「働きすぎ」に注意
・支給期間中に働きすぎると、給付金が減額または不支給になります。
◦原則:最大10日、または80時間以内の就業にとどめる。
◦賃金支払いがあれば13%以内に抑えること。
▶ 就業日・労働時間・給与の記録管理が重要。
5. 配偶者が雇用されていない場合でも諦めない
・配偶者が自営業やフリーランスなどで育休が取れない場合でも、合理的理由があれば本人単独でも支給対象になる場合があります。
▶ ハローワークで必ず確認を。要件緩和の可能性もあるため最新情報をチェック。
6. 企業内のサポート体制も整える
・事業主が申請手続きを行うため、企業側の理解・準備も不可欠。
◦総務・人事担当者と連携し、制度の内容や申請スケジュールを共有する。
◦男性社員の取得促進の一環として、社内マニュアルを整備することも有効。
7. 時短勤務など他制度との併用も視野に
・出生後休業支援給付金と、「育児時短就業給付金」などの制度を連携活用することで、出産・育児期の経済的負担を軽減できます。
8. 申請期限の「月末締め」に注意
・原則として、育児休業の開始日から4か月を経過する月の末日が申請期限。
◦例:4月1日開始 → 8月末までに申請
▶ 期日を1日でも過ぎると申請できないため、カレンダー管理が必須。
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出生後休業支援給付金ガイド -まとめ
この記事では「出征後休業支援給付金」について解説しました。
この記事がお役に立てば幸いです。

平川 文菜(ねこころ)